日本の持ち家率は約6割。いまなお「いつかはマイホーム」という庶民の夢は健在です。そんななか、上昇し続ける不動産価格。いま買うべきか、買わないべきか。迷っている人も多くいるでしょう。もし「いま」新築マンションを普通の会社員が買ったとしたら……みていきましょう。
手取り35万円の東京都・男性会社員…「新築マンション購入」も、家計破綻を招く「ローン返済額」

首都圏新築マンション平均価格7,418万円…もし普通の会社員が買ったら

実際に首都圏新築マンションの平均価格である7,418万円の物件を購入しようとしましょう。物件価格の35%は2,596万円。残りはローンを利用し、以下の条件で返済するとします。

 

  • 借入金額:4,822万円
  • 返済方式:元利均等
  • 金利:当初5年0.6%、以降1%と仮定
  • 返済期間:30年

 

この場合、利息は666万2,894円で、返済総額は5,488万2,894円。月々の返済額は、当初5年は14万6,394円、以降は15万3,664円です。

 

厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、東京都の40代男性の月収は平均46万3,200円、手取りは35万円程度。賞与含めた年収は、推定708万5,300円になります。月々14~15万円程度の返済。決して余裕があるわけではありませんが、現実的な返済額といえそうです。

 

ただ問題は、ローンの完済のタイミング。仮に全国平均同様、43歳で30年ローンを組んだとしたら、完済は後期高齢者となる直前。つまりローン返済をしながら、老後を見据えた資産形成も進めていかなければならない、ということになります。

 

できれば、年金生活が始まるまで住宅ローンは完済しておきたい……そう考える人も多いでしょう。そこでローン返済期間を30年から20年にしてみたら。この場合、当初5年の返済額は21万3,262円、以降は21万9,658円となります。

 

月々21万円の返済。通常、返済負担率(税込年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合のこと)は、上限35%といわれているので、年収750万円程度であれば適正範囲といえます。

 

前出の厚生労働省の統計によると、東京都男性の場合、50代の平均値であれば適正範囲内。しかし40代と定年後の60代前半では上限を超えます。

 

【年代別「東京都男性の推定年収」】

「20~24歳」:3,417,900円

「25~29歳」:4,491,900円

「30~34歳」:5,545,300円

「35~39歳」:6,409,000円

「40~44歳」:7,085,300円

「45~49歳」:7,451,200円

「50~54歳」:8,058,400円

「55~59歳」:8,258,000円

「60~64歳」:5,927,100円

 

出所:厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より算出

 

普通の会社員が、普通の新築マンションを買ったら。30年ローンでは老後を見据えた資産形成に不安が残り、年金生活前の完済を目指したら、厳しすぎる家計運営を強いられ、家計破綻のリスクが増大……上昇を続ける不動産価格を前に、庶民の夢が一層遠のいています。