会社が利益の一部を株主へ現金で還元するのが「配当金」です。そして、利益に対して配当金の割合が高い会社(=配当性向が高い)は、株主還元の姿勢が強いと評価されます。しかし、配当には別の考え方もあると株式会社ソーシャルインベストメントの川合 一啓氏はいいます。みていきましょう。
100億円の純利益…株主が得するのは「配当あり」or「配当なし」? ※画像はイメージです/PIXTA

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こまめな配当より、さらなる成長のほうが嬉しいことも

まず例を挙げてみます。

 

ある会社がある年、100億円の純利益を出したとします。そしてそこから、この会社の資本配分を2パターン考えてみましょう。

 

まずパターン1では、その利益から配当は一切出さずに、それをすべてなんらかの投資に回すとします。そしてその成果として、翌年の純利益が20%増の120億円になるとします。またそのあとも、純利益をすべて投資に回し、毎年純利益が20%ずつ増えるとします。

 

一方のパターン2では、配当性向100%で100億円をすべて配当に回すとします。そして仮に、その会社の株を買ったときの配当利回りが6%だったとします。こちらのパターンでは毎年純利益は100億円のままですが、6%という高利回りで株主は毎年配当金を手に入れることができます。

 

この前提で、3年が経過するとしましょう。

 

パターン1の場合、純利益は当初の約73%(1.2の3乗)増で、173億円になります。その間に受け取れる配当はゼロです。

 

一方のパターン2の場合、純利益は100億円のままですが、購入株価の18%(6×3)分の配当を受け取ることができます。

 

単純に株価が純利益に比例するならば、毎年純利益を20%増やすパターン1の場合、3年で株価が73%上がることになります。一方のパターン2の場合、株価の上下を無視するとして、3年間の利益は配当分の18%ということになります。

 

さて、あなたが株主ならば、この会社にはどちらのパターンで資本を配分してほしいでしょうか?

 

純利益の増加分73%がそのまま株価に反映されるとは限りません。しかしそれ以上に株価が上がる可能性もありますし、少なくともパターン2で得られる配当利回りの合計18%よりも、株価は上がる可能性が高そうです。したがって、パターン1のように資本を配分してもらったほうが、株主としては嬉しいのではないでしょうか。

 

配当性向が高いほど、その会社の株主還元の姿勢は強いと思われがちです。

 

しかしこの例のように、利益を配当金という形でそのまま株主に還元するよりも、なんらかの投資に回して利益を増やして株価を向上させ、それ以上の株主還元をすることもできるのです。

「資本配分こそ経営」といっても過言ではない

ここで注目すべきことは、資本配分の重要性です。実はそれこそが、「経営」だといっても過言ではないのではないでしょうか。

 

そして、常に有効な投資をし続け、純利益を増やし続け、株価を上昇させ続けることができる経営者こそ、優秀な経営者だといえるのかもしれません。

 

ですから配当の高低よりも、そういった経営者が経営する会社に投資をする、ということもまた投資戦略の1つだといえそうです。