定年はいつですか? 多くの人が「60歳だけど、65歳まで今の会社で働ける」というでしょう。では定年はさておき「何歳まで」働きたいでしょうか? 高齢者の定年について、みていきます。
65歳・定年退職が「勝ち組」と呼ばれる、日本の高齢者の悲惨

「定年後も働きたい」…高齢者の意欲に隠された本音

ただもちろん、すべての高齢者が仕事に対して前向きか、といえばそうではありません。前出の調査でも「何歳まで働きたいか」の問いに、13.6%は「仕事をしたいと思わない」と回答しています。

 

また「仕事をしている理由」を尋ねた問いでは、「収入がほしいから」が最も多く45.4%、「働くのは体によいから、老化を防ぐから」が23.5%、「仕事そのものが面白から、自分の知識・能力を生かせるから」が21.9%。「お金」「健康」「やりがい」が高齢者の働くモチベーションとなっています。

 

そのうち「お金」は、「十分なお金があれば働かなくてもいい」とも読み取ることができます。

 

厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金の平均年金受給額は月額5万6,358円、厚生年金の平均受給額は月額14万6,145円。これで十分かといえば「心許ない」というのが多くの高齢者の本音でしょう。

 

また厚生労働省『人口動態』によると、2020年、男性の平均初婚年齢は31.0歳、女性は29.4歳。晩婚化が進んでいます。従来、教育費と住宅ローンの目途がつくというのは、50代の前半でした。ちょうど社会員人生で最も給与が高くなる時期で、大卒・大企業勤務であれば、1,000万円近い年収になります。老後を見据えての貯蓄も弾みがつき、60代で安心して年金生活がスタート、というのがよくあるパターンでした。

 

【男性・大卒・大企業勤務の会社員「給与推移」】

20~24歳:3,521,700円

25~29歳:4,815,400円

30~34歳:5,912,800円

35~39歳:7,045,800円

40~44歳:7,842,600円

45~49歳:8,674,600円

50~54歳:9,763,100円

55~59歳:9,432,600円

60~64歳:6,107,000円

 

出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より算出

※大企業=従業員1,000人以上企業

 

しかし晩婚化、第1子誕生が遅くなった現在、従来40~50代で迎えていたライフイベントが、5~10年ほど後ろ倒しになっているのです。そのため、50代でも大して貯蓄は進まず、定年を迎えても住宅ローンは払い終えていないケースが増加。返済予定は70代というのも珍しくはありません。

 

もうすぐ65歳が定年が当たり前になります。そのときに退職し、年金生活に入ることのできる人は、「勝ち組」となる限られた人だけかもしれません。