(※写真はイメージです/PIXTA)

サッカー通りみなみデンタルオフィス院長・橋村威慶医師は、コロナ禍であっても、歯科医院へ定期的に通うことをおすすめしています。なぜなら受診して感染するよりも、歯科治療を受けないでウイルス感染やその他の病気を発症するほうが確率としては高く、またQOL(生活の質)の低下にも繋がりかねないからです。とはいえ、数ある歯科医院の中から受診先を決めるのは容易ではありません。そこで今回は「コロナ対策」に着目し、医院選びのコツを伺いました。歯科医の目線から見た「良い歯科医院」とは?

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歯科医院の数はどれくらいあるの?

報道などで取り上げられているのでご存じの方もいると思いますが、歯科医院の多さをイメージできるように、よくコンビニエンスストアとの比較が挙げられます。2021年1月時点で全国の歯科医院数は68,024医院、コンビニ数は55,911店。

 

歯科医院がコンビニより多いことに驚く方もいますが、これは数字のトリックと言えます。

 

本題から少し外れますが、コンビニ店と歯科医院では1日あたりの客数(患者数)が桁違いです。コンビニでは1日あたり平均697人(2020年1月)、歯科医院では平均19.8人(東京都2020年6月)と差が大きく(特にセブンイレブンは多く1日当たり1000人弱も!)、また競合する職種でもないので、比較対象としてはミスマッチです。そもそもコンビニの統計が出された1983年以来、コンビニの数が歯科医院を超えたことは一度もありません。

 

比較するなら、立地条件と床面積、客1人に対する接客時間や単価を考えて、美容院のほうが歯科医院と近似しています。厚労省によると、2015年の美容院の総数は240,299店、一店舗あたりの1日の平均来店客数は平日10.0人、休日13.9人となっています。店舗数が3倍以上違うのに、美容院と歯科医院の差がさほど多く感じられないのは、歯科医院が一部地域に密集しているためです。ただ、いずれの業界も過剰傾向であるのは間違いありません。

「感染リスクの低い歯科医院」を見つけるには?

■歯科医院は意外と「感染しにくい環境」

本題に戻りましょう。厚労省によると感染抑制の基準は温度17℃以上28℃以下、湿度40%以上70%以下、CO2濃度1,000ppm以下となっています。

 

1970年の研究で、歯科診療室の温度と湿度を、東京と新潟で調べたものがあります。各季節の温度の範囲は18℃〜26℃、湿度の中央値は55〜64%でした。少し古い研究ですが、基本的に歯科医院が使用する機材や種類は変わっていません。現在はより室内環境が整っていますから、温度と湿度の2点は問題ないと言えるでしょう。

 

■選ぶなら「CO2計測器」のある歯科医院

ただし、CO2濃度に関する研究報告はまだありません。歯科医院の構造はまちまちなので、再現性がないためでしょう。今は多くの歯科医院がCO2計測器を取り入れています。歯科医院の特徴として、義務化されていないものは積極的に取り入れない傾向があります。あえて導入している歯科医院はCO2濃度に対し注意(換気)をしている医院なので、医院選びの一つの目安と考えてよいでしょう。

 

■個室タイプの歯科医院は避ける。パーテーションはOK

個室となっている歯科医院の場合、個室に入るのは患者さん、歯科医師、歯科助手1〜2名となります。医療従事者は常に自身の感染に気をつけていますが、今回のウイルスの特徴として、感染しているか否かをあらかじめ完全に把握することが難しいため、絶対に感染していないとは言いきれません。歯科診療室が感染しにくい場とはいえ、歯科医院の個室は手術室のようには作られていないので、換気も落ち、患者さんも含め誰か一人でも感染していたらクラスターが発生する可能性もあります。

 

また歯科医院の中には、医療専用の光触媒によるウイルス除去装置を天井に設備している医院もあります。この除去装置は診療室全体のウイルスを吸い上げる能力があり、感染する可能性がより低くなります。各個室に設置することも可能ですが、適応容量が80m2近くあるため個室向きではなく、また高額なので実際に設置するのは難しいのでしょう。

 

その点を考慮すると、天井が繋がっておらず背の高いパーテーションで仕切られた半個室の診療室がベストです。側面からの遮蔽による感染防止と、光触媒装置があれば各半個室から上方へとウイルスを吸い上げてくれます。

 

■「ディスポーザブル(使い捨て)」をどれだけ使っているか?

「スタンダードプリコーション」と言われる標準予防策があります。簡単に説明すると、患者さんに使用した器具や血液などが付着したものを他の患者さんには使用しない、使用する場合は必ず滅菌(消毒以上にまったく菌やウイルスがいない状態)するか、ディスポーザブル(使い捨て)のものを使用するというものです。

 

歯科医院を選ぶきっかけは、このディスポーザブル(使い捨て)をどれだけ患者さんに使っているかがポイントです。ほとんどの歯科医院はオートクレーブ(滅菌機)を備えています。歯科医院ではオートクレーブに入る器具はほとんどオートクレーブに入れますが、できない器具、材料もあります。その場合、アルコールなど滅菌より低いレベルでの消毒を行うか、もしくはディスポーザブルのものを使用します。安全性から考えるとディスポーザブルのほうが良いのですが、コストが高くつくのが欠点です。そこをあえてディスポーザブルを使用している歯科医院であれば、感染対策に力を入れている医院といって間違いないでしょう。

 

■一番わかりやすいのは、ズバリ「待合室」

待合室は情報の宝庫です。ホームページなどで、各歯科医院が感染に対する取り組みはある程度把握できますが、やはり実際に行ってみないとわかりません。待合室の広さ、何を掲示しているか、スタッフの対応など、待合室を見るとその医院がどの程度感染対策をしているかわかります。歯科医師とそのスタッフは診療を中心に考えがちです。待合室はどうしても二の次となり、しっかり感染対策がしてある待合室なら診療室の感染対策はより徹底していると言えるでしょう。気になる歯科医院があれば、思い切って待合室に入ってみましょう。

 

今回は、感染対策に着目した歯科医院選びについて解説しました。数ある歯科医院の中からどこを選べばいいのかわかりにくいものでしょう。感染対策の他にも、腕はいいのか? 痛くない治療はしてくれるの? などなど…。次回も、歯科医からみた良い歯科医院の選び方について述べていきます。

 

 

橋村 威慶

サッカー通りみなみデンタルオフィス 院長

 

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。