普段から自分でできる「ワキガ対策」
それでは、ワキガにはどのような対策があるのでしょうか。まず、普段からご自身でできる対策からご紹介したいと思います。
市販の制汗剤やデオドラント製品には一時的な消臭効果があり、これは腋臭症治療ガイドラインでは、推奨度がグレードBになっています。グレードBとは“根拠があり、行うよう勧められる”治療ということになります。もっとも取り組みやすい方法だと思いますが、まずは市販のものを試したらよいでしょう。
メリットは、簡単に始めやすいとうことですが、デメリットとしては、ずっと継続しないといけないためコストがかかり続けるということや、人によっては薬剤にアレルギーが出てしまったり肌が荒れてしまったりして使用し続けられないというケースがあることです。そのような場合は、後述する医療機関での治療法が必要になります。
次に、食べ物や生活習慣に関する注意が挙げられます。たとえば、動物性タンパク質の大量な摂取、スパイス、タバコとワキガ臭の増強との因果関係がいわれています。しかし、科学的根拠を示した優れた論文が少ないので推奨度としてはグレードC1(根拠はないが行うよう勧められる治療)となっています。
デオドラント剤の使用よりは推奨度が低いものの動物性タンパク質に偏った食事、スパイスの取りすぎや喫煙は、ワキガの予防には控えたほうがよいでしょう。
また、ストレスとワキガとの因果関係もいわれています。ストレスがかかると自律神経のうち、交感神経が活発になりアポクリン汗腺からの汗の分泌が増すためです。したがって、ストレス発散もニオイの低減に良いとされています。こちらもグレードC1です。
さらに、入浴は直接アポクリン感染からの分泌物や体表の垢や細菌を除去できますのでお風呂でリラックスすることにも予防効果があるといえます。
脇毛の処理も腋臭症改善にとって有効であるといわれています。特に、医療脱毛による永久脱毛には腋臭症改善に効果があったとの論文もあります。注意をしないといけないのは、エステティックサロンでの除毛で、こちらは永久脱毛でないので腋臭症には効果がありません。脱毛を検討する際は、医療機関に受診するようにしてください。
ご自身で、生活習慣や、日々のケアに気をつけていても改善が見込めない場合または自己ケアの継続が難しい場合は医療機関を受診することをお勧めします。受診科としては形成外科に受診すると良いでしょう。
保険適用可能な治療も…医療機関の「ワキガ対策」
ワキガの手術療法として、保険診療でできるものは剪除法(皮弁法)、有毛部皮膚切除法があります。剪除法(せんじょほう)というのは、皮膚を切開してその切開したところからハサミなどで直接アポクリン腺を見ながら、削ぎ取るように切除してゆく方法です。この方法はガイドラインではグレードBとなっています。
皮膚に余裕のあるかたは有毛部皮膚切除法という選択肢もあります。こちらは皮膚ごと毛の生えているエリア、つまりアポクリン腺の多いエリアを切除してしまう方法です。
手術療法は、まずきちんとした診断のあとにしていただく必要があります。手術療法は、効果としては高いですが、傷跡が残ることや、手術後の感染や出血、血腫(血が溜まってしまうこと)などのリスク、手術後1週間から2週間程度不便な生活をしないといけないことなどもありますので、担当する医師にメリット、デメリットをきちんとお話いただいて、納得したうえで行わないといけません。
一部の形成外科、美容外科、美容皮膚科では、特殊な装置による治療をしている施設もあります。ラジオ波やマイクロ波、レーザーを用いた治療などがそれにあたりますが、これらはすべて保険適応外の治療になります。
皮膚を切開する手術療法にくらべると、手術後の生活が楽だったり大きな傷にならなかったりといったメリットはありますが、自費診療のため治療代金が保険診療に比べると高額になったり、傷が残らないという謳い文句であっても実際に傷が残ってしまったり、副作用として火傷や感染症を起こしてしまうケースもありますので、保険診療の治療以上に慎重に選ぶ必要があります。
さらに、未承認機器を使用した治療であり、手術療法よりも科学的根拠に乏しい治療ですので、依頼する医師には必ずメリットデメリットはもちろんのこと、その治療の効果に関してどのくらいの根拠(エビデンス)をもっているのかを尋ねるべきでしょう。
丸山 直樹
銀座マイアミ美容外科 院長
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