高給取りというと、医者であったり、パイロットであったり、特別な職業に就く人というイメージですが、会社員でも高給を実現する人がいます。誰もが羨む存在ですが、意外と厳しい現実があるようです。みていきましょう。
手取り給与「月55万円」でも…「高給取りサラリーマン」が直面する、厳しい生活

給与分布からみる、高給取りサラリーマンの現実

男性で大卒で大企業勤務で年収は1,400万円だと、月収は85万円程度、手取り額は、独身だと55万円程度、子ども2人いれば、57万円ほどになります。

 

そんな高給取りはどれくらいいるのでしょうか。前出調査の会社員全体の5.4%ほど*。20人に1人という限られた人たちです。

 

*調査の給与区分上、基本給80万円以上と定義し算出

 

各年代でみてみると、40代までは10%を切っていますが、50代では、8人1人は「高給取り」といえる水準。大卒で大企業勤務という狭き門であることが前提ではありますが、高給取りは決して夢物語ではありません。

 

【年齢別「高給取り」の割合】

20代後半:0.3%

30代前半:1.0%

30代後半:2.4%

40代前半:4.7%

40代後半:7.4%

50代前半:12.1%

50代後半:12..4%

 

出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より算出

※男性・大卒・従業員1,000人以上企業勤務の場合

 

ただ高給取りも、ちらつくのは定年の二文字。現在、定年が65歳へ引き上げられる経過処置期間中。2025年4月からは、定年制を採用しているすべての企業は65歳定年制が義務に。また2021年4月1日に施行された改正「高年齢者雇用安定法」では「70歳までの定年引上げ」「70歳までの継続雇用制度」などを努力義務とすることが決まりました。

 

ただ定年になる70歳まで高給取りでいられるかといえばそうではないでしょう。定年は60歳、そこでいったん退職扱いとなり、希望すれば再雇用され、嘱託社員として働き続けられる。または60歳で役職定年を迎え、役職なしで働き続けられる……多くの会社が採用している定年制度です。

 

定年まで高給取りを維持できるほど体力のある企業は少ないですし、若手も育てなければいけません。「一瞬だけ高給取り」というのも仕方がないでしょう。

高給取りほど「老後破産する」という悲劇

一瞬でも高給取りというのは羨ましい、と思うでしょうが、実は高給取りほど老後、年金だけが頼りという状態になったとき、「破産しやすい」といわれています。

 

老後破産のパターンとして、「一度あげた生活水準を下げらなかった」という理由が上げられます。「身の丈にあった暮らしをする」というのは、口でいうほど簡単ではなく、たとえば都心の高級マンション暮らしだった夫婦が、リタイア後、郊外に引越して慎ましく暮らす、というのは現実的でしょうか。なんとか現役時代から住んでいるマンションに住み続けよう、とがんばるでしょう。

 

そこで十分な蓄えがあればいいのですが、給与が大きく伸びたのは定年前の50代。そこで贅沢をせず、老後を見据えて堅実に暮らしていけばいいのですが、そこで「子どもたちも1人立ちしたから」と、「自分たちへの投資」にお金をかけるようになるパターンが多いといいます。

 

このような人たちの言い分としては「退職金があるから大丈夫」というもの。しかし多くが退職金までも考えずに使い切ってしまい、挙句の果てに自己破産……よくある、元高給取りサラリーマンの行く末です。

 

高給取りだろうと、なかろうと、老後を見据えた資産形成は、自助努力が求められる現代・日本では必須なのです。