融資額の倍率と頭金の目安
年収に対する融資額の倍率は7倍程度からが多く、場合によっては10倍以上の融資を受けられることもあります。ただし融資額の倍率は物件の収益性や評価、過去の投資実績、ここまでにお伝えした属性などによって総合的に判断されるため、一律で年収いくら以上ならXX倍などと明示されていません。
頭金は購入資金の10〜20%程度が一般的ですが、こちらも物件評価や過去の投資実績、属性によっては少ない頭金でも融資を受けられる場合があります。また頭金とは別に、仲介手数料や融資諸費用、登記費用などの諸費用は手持ち金で用意しなければならない金融機関もあります。
金融機関によって属性の判断は異なる
融資額や頭金は物件や申し込み者本人の属性によって変わりますが、もっとも注意したいのがその判断基準は金融機関によって異なる点です。例えば、不動産投資ローンの金利が低い金融機関なら、できるだけ安全な融資判断をしたいと考え審査基準が厳しくなる傾向があります。
逆に融資収益に力を入れている金融機関なら、収益の可能性を重視して緩やかな判断基準で審査してくれる可能性もあります。このため単純に勤務先の規模や年収で融資額や頭金を判断するのではなく、金融機関ごとの違いを理解した上で融資額や申し込み先を考えることが大切です。
ただしこれは投資初心者の方にはかなり難しいことです。さまざまな不動産投資ローンを扱った実績のある不動産会社に相談し、最適な金融機関を一緒に探す方が安全でしょう。
サラリーマンであることを活用する
サラリーマンは自営業者などに比べ将来の安定性が高く、属性評価で有利になる可能性があります。金融機関が重視するのは長期のローンを滞りなく支払えるかどうかであり、勤めている企業が安定しているなら大きな信用の裏付けとなります。
逆に自営業者は事業の安定性に不安があると判断されれば、融資期間が短くなったり金利が割高になったり、保証人を求められたりするケースもあります。サラリーマンであることは融資を受ける上で非常に有利な条件であり、不動産投資を始める上で活用すべきアドバンテージなのです。
定年までに完済がキーポイント
不動産投資ローンを組む上でキーポイントになるのが、定年までにローンを完済することです。働いているうちにローンが終われば諸経費を除いた家賃収入が手元に残るようになり、定年してからの年金生活を補ってくれます。
しかし定年後もローン返済が残ってしまうと、万一家賃収入が減った時に返済を補うことができない恐れがあります。そうしたリスクを避けるためにも、できるだけ早めに不動産投資を始め、働いているうちに完済した方が安心です。
また40代、50代になってから不動産投資を始めようとすれば、多くの自己資金が必要になったり長期のローンが組めず毎月の返済額が大きくなる可能性もあります。不動産投資のような長期スパンで計画する資産運用は、若いうちに始めるほどリスクが少なくなるのです。
資産形成で若いサラリーマンは有利
不動産投資ローンの審査では物件の収益性や資産価値が考慮されます。しかし高額で長いローンを確実に返済してもらうため、金融機関は申し込み者本人の経済力や社会性といった属性も重視します。その点でサラリーマンは、長期に安定して返済できる可能性が高く有利な属性の一つになります。
また、若い方は長期のローンが組みやすく毎月の返済額が抑えられ、しかも定年前のローン完済が期待できるなど多くのメリットを持ちます。
資産形成というと若いうちは無縁なものと考えてしまうかもしれません。しかし、人生100年時代と言われている今、老後資金の備えはすべての人に共通する課題です。いずれ資産形成を始めるなら、投資リスクを回避しやすい条件を備えている若いサラリーマンこそ、不動産投資をスタートする最適な条件と言えます。
山崎 博久
リズム株式会社
アセットコンサルティング事業部長