厚生労働省の調査で産業別に給与事情をみていくと、最も高いのは「銀行・保険業」。やはり「金融マン」はイメージ通りの高給のようですが、そのなかで「地方銀行」はどれほどの給与なのでしょうか。有価証券報告書などから、平均給与を探っていきます。
大手「地方銀行」の平均給与…「金融マン=高収入」のイメージを覆す給料事情

有価証券報告書にみる「地方銀行」の給与事情

コロナ禍前は銀行業界の業界規模は上昇傾向にありましたが、2020年のコロナ禍で大きく下落に転じました。コロナ禍による消費低迷、経営悪化に備えた企業の貸倒引当金などの積み増しが収益の重しになっています。

 

地方の中小企業や個人への融資が多い地方銀行は、都市銀行に比べると収益の下落幅が大きく、厳しい状況にあります。また日銀のマイナス金利政策の影響により、収益力は低下傾向にありましたから、まさにダブルパンチといった状況です。

 

厳しさ増す地方銀行業界の中で、総資産が最も大きいのは、。福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行による「ふくおかフィナンシャルグループ」で27兆5,100億円。足利銀行、常陽銀行による「めぶきフィナンシャルグループ」が22兆8,351億円、横浜銀行と東日本銀行による「コンコルディア・フィナンシャルグループ」が21兆5,773億円と続きます。

 

また経常収益に注目すると、トップは「コンコルディア・フィナンシャルグループ」。「ふくおかフィナンシャルグループ」「めぶきフィナンシャルグループ」と続きます。

 

このような地方銀行の給与事情をみていきましょう。地方銀行は業種としては「銀行業」に分類されますが、厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、平均年収は656万1,800万円。大卒男性に限ると、816万5,600万円になります。

 

従業員規模別にみていくと、「従業員1,000人以上企業」で658万8,900円、「従業員100~999人企業」で611万9,100円、「従業員10~99人」で641万9,100万円です。

 

有価証券報告書で個別にみていきましょう。総資産トップ3はすべて持ち株会社。銀行によって異なりますが、ここで示されている平均給与は経営の“本部”にいる人たちのものなので、地方銀行の給与の実態はみえてこないでしょう。

 

■ふくおかフィナンシャルグループ
810万3,000円
(従業員数:302人、平均年齢:36.3歳、平均勤続年数:10.2年)

 

■めぶきフィナンシャルグループ
1,104万1,000円
(従業員数:18人、平均年齢:50.7歳、平均勤続年数:25.5年)

 

■コンコルディア・フィナンシャルグループ
1,274万7,000円
(従業員数:8人、平均年齢:45.4歳、平均勤続年数:13.0年)

 

そこで総資産トップ10の中から銀行単体で確認できる「千葉銀行」など4行についてみていくと、600万円後半から700万円前半というのが平均値でした。

 

■千葉銀行(総資産額4位)
740万2,000円
(従業員数:3,905人、平均年齢:38.5歳、平均勤続年数:15.1年)

 

■静岡銀行(総資産額6位)
739万7,000円
(従業員数:2,615人、平均年齢:38.9歳、平均勤続年数:16.2年)

 

■京都銀行(総資産額7位)
657万6,000円
(従業員数:3,380人、平均年齢:37.8歳、平均勤続年数:13.2年)

 

■八十二銀行(総資産額9位)
647万1,000円
(従業員数:3,089人、平均年齢:41.9歳、平均勤続年数:15.6年)

 

金融マンというと、高給取りのトップクラス、というイメージがありますが、地方銀行の場合、平均値よりは高いものの、ずば抜けている印象はありません。メガバンクと地方銀行、給与の格差は大きいのかもしれません。

 

現在、地方銀行は、厳しい経営環境のもと、再編が加速しています。2020年11月には独禁法の適用除外とする特例法が施行。「第4のメガバンク構想」を掲げるSBIホールディングスは、新生銀行のTOBで話題になったように、次々と地方銀行に出資し、連携を強めています。

 

地方銀行の経営力は想定以上の早さで弱体化するだろうという専門家も多く、事業運営の効率化が急務です。