それでも改善しない場合、原因は「鼻」かもしれない
さて、これらの治療をもってしても改善しない咳として、非常に多いのが「鼻」からの咳です。
鼻を原因として咳が出るメカニズムには二通りあります。一つは鼻が喉に流れ(後鼻漏)喉に絡むため、それを出そうとして咳が出る仕組み。こちらは痰の絡みを取るように意図的に出すことが多いです。
もう一つはくしゃみの発生と同じ仕組みです。炎症により敏感になっている鼻粘膜が刺激を感じ、迷走神経刺激によって咳が出ます。こちらは突発的で、自分ではコントロールできません。
これが医師から正しく評価されなければ、やがて気管支にも影響が広がり、咳喘息や気管支喘息にまで発展してしまいます。
気管支喘息と鼻の病気の関連性については近年注目が集まっており、気管支喘息治療をするにあたりアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の治療も行うことが重要視されています。
アレルギー性鼻炎は、アレルギー検査の結果でハウスダストやダニに反応を持つ場合は通年性アレルギー性鼻炎と判断し、鼻炎治療を継続する必要があります。
またスギなどによる花粉症は季節性アレルギー性鼻炎と言われ、その時期にしっかりとコントロールする必要があります。
コントロールのしにくい気管支喘息において鼻炎治療を加えるだけで格段にコントロールしやすくなる場合もあります。
専門医が最も問題視する「慢性副鼻腔炎」とは?
私が一番問題視しているのは慢性副鼻腔炎です。慢性副鼻腔炎は症状が乏しいことが多いです。自覚症状としては咳や痰が絡むという訴えが多く、誰も鼻の症状を訴えないため、そこで見逃されてしまうケースが非常に多いのです。
また咳や痰で来院される慢性副鼻腔炎は軽症であることが多く、耳鼻咽喉科でも問題視されないレベルのため放置状態とされることが少なくありません。
教科書にも、古くから長引く咳の原因として「鼻炎」や「副鼻腔炎」は記載されているにも関わらず、実際の医療現場では鼻症状がないと医者側も意識しないことが多いです。
軽症だと鼻咽喉ファイバースコープでもほとんど所見がなく、これを見つけるために有用な検査は副鼻腔のCTまたはMRIになります。
極めて軽症の場合は篩骨洞という副鼻腔にわずかな所見を認める程度ですので、意識をして読影をしないと見落とすことも多く、「他院でCTを撮ったが問題なかったと言われた」という患者さんにも何度もお会いしています。