60歳から老後資金を用意するためには、定年後も長く働くことが大前提になります。しかし、60歳以降は再雇用となりますから、仕事内容がほとんど変わらないのに収入は半減してしまいます。では、どうしたらいいのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの長尾義弘氏が著書『運用はいっさい無し!60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)で60歳から老後資金を貯める働き方を解説します。
「大企業の部長でした!」も通用しない…60歳からの無残な給与額 (※写真はイメージです/PIXTA)

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「セカンド・キャリア」を持つべき理由

もうひとつ。60歳以降も働くためには、セカンド・キャリア、パラレル・キャリアを身につけることが重要です。それが自分らしく働けること、満足感のある働き方・生き方ができることへとつながっていきます。

 

自分のやりたい仕事を見つけるのはたいへんですし、それを実現するのも難しいと思います。ただ、やってみないとわかりません。

 

筆者自身、ファイナンシャルプランナーになる前は、まったく別の職業に就いていました。大学を卒業して以来、ずっと出版業界にいたのです。しかし、活字メディアからスマホやインターネット中心の世の中へと移り変わるにつれ、出版業界は右肩下がりの斜陽産業になってきました。そこで、仕事のあり方を考えた私はファイナンシャルプランナーの資格を取り、自分に関わりのあった出版メディアを通じて発信するようになったのです。

 

私の場合、編集がファースト・キャリアだとすれば、ファイナンシャルプランナーはセカンド・キャリアに当たるわけです。このセカンド・キャリアによって長く、しかも楽しく仕事ができるようになりました。

 

60代は、子どものために、家族のためにという目的から解放され、「自分のため」を考えられる年齢でもあります。やりたいことに挑戦したっていいのです。

 

身内の話で恐縮ですが、兄についてお話したいと思います。兄は、国家公務員上級職に受かり、官僚になりました。その後、郵政民営化もあり民間の会社に移り、65歳のときに関連会社の社長を務めていたのですが、司法試験に挑戦して、みごとに合格し、65歳で弁護士になったのです。

 

いくつになっても挑戦はできます。それが楽しい老後へのきっかけにもなるのです。

給付金を受け取りスキルアップを目指す

長く楽しく、そして自分らしく働く。そのためには、50代からスキルを磨くことが成功の秘訣です。

 

前回登場した広告部に所属している山川さん。若いころは現場で活躍していましたが、管理職になったいまは現場を離れています。

 

「60歳からは、またクリエイティブな現場に戻って仕事をしたい」

 

それが山川さんの偽らざる本心です。

 

とはいえ、広告は紙媒体からインターネット、そして動画へと変化しています。また、Webページや動画の制作となれば、使うパソコンのソフトも違います。10年のブランクは大きく、実際に現場でやっていけるかどうか自信が持てません。でも、自分のやりたい仕事はあきらめたくありません。

 

そこで、スキルアップを思い立ちました。Webの制作と動画制作を学ぶため、夜間の専門学校と通信教育を始めたのです。受講したWebデザイナー検定の講座は教育訓練給付制度の対象になっており、10万円の支給を受けました。家計もちょっと助かります。

 

スキルを身につけたら、60歳から少しチャレンジするつもりです。といっても、慎重な山川さんのこと、いきなり起業するといった大胆な行動はしません。まずは再就職をして勤務時間を減らし、副業としてスタートする予定です。必要なものはパソコンと業務用のプリンターで、初期投資もそれほど大きな金額ではありません。

 

また、クライアント探しは50代の人脈がカギになると聞き、いろいろな集りに積極的に参加するようになりました。

 

なかなか用意周到な山川さん、きっとセカンド・キャリアを身につけ、楽しい暮らしを実現できると思います。「老後資金がない!」なんて慌てふためいていた日々は、笑い話になるかもしれませんね。