日本では長らく「宅配便は対面での受け渡しが普通」とされてきた。ここ2年ほどで普及してきた「置き配」はユーザーにどう受け止められ、社会にどう影響を及ぼしてきたか。物流ジャーナリスト・刈屋大輔氏が解説していく。 ※本連載は、書籍『ルポ トラックドライバー』朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
「日本で置き配は御法度だった」…アマゾンが決行した〈対面受け取りの格下げ〉への反応 (※写真はイメージです/PIXTA)

アマゾンの新しい配送体制で「コスト削減」できるワケ

さらに2020年1月には東京都内3区、大阪府3区、名古屋市、札幌市でも実証実験を実施した。いわゆる大都市圏においても、多治見市と同様、再配達の半減に成功するなど置き配の有効性を確認できたことから、2020年3月下旬に30都道府県を対象にした本格運用に踏み切った。

 

同社のジェフ・ハヤシダ社長は「置き配指定サービスの初期設定が、お客様の再配達の手間を軽減し、より便利に商品をお受け取りいただけることに加え、配送に関する社会的課題解決のために重要な役割を果たすと考えている」とコメントしている。

 

アマゾンでは、置き配を推進するのはあくまでもユーザーの利便性向上(商品の受け取りスタイルの多様化)や社会貢献(再配達削減による環境負荷軽減)を実現するためだ、と強調する。

 

しかし、その主たる目的がコスト削減にあることは想像に容易い。

 

商品配送を「対面での受け渡し」から「置き配」に移行させることのコストインパクトは非常に大きい。実証実験の結果からも判明したように、まず再配達が劇的に減少する。

 

さらに、指定された場所に商品を置くだけなので、配達業務には経験の浅いスタッフを充てられるようになる。また、一日当たりに配達する個数も上乗せできるなど、配達効率は飛躍的に向上する。

 

置き配の推進で浮いた分のコストは配送料金の値下げというかたちでユーザーに還元できる可能性もある。配送料の負担が軽減されれば、ユーザーの購買意欲が高まり、売り上げ増につながることも期待できる。

 

置き配の本格運用に舵を切ったことで、この先アマゾンの商品配送体制は大きく変化していくと予想される。

 

現状では、サービスプロバイダと呼ぶ配送委託会社を軸に、宅配便大手3社や「アマゾンフレックス」(アマゾンが直接業務委託契約を結ぶ個人事業主)といったプレーヤーたちを、荷物の大きさやエリアごとで使い分けている。

 

しかし、今後は「アマゾンフレックス」の比率を徐々に高めていくはずだ。