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コロナ禍、花粉症はいつも以上にきちんと治療すべき
コロナウイルス感染症との関連でいうと、三つの問題があります。一つは、花粉症の症状がコロナウイルス感染症と似ていること、もう一つは花粉症によって周りにコロナウイルス感染症を広げてしまう可能性があること、さらにもう一つは花粉症で目や鼻を触る行動がコロナウイルス感染のリスクを上げてしまうこと、です。
現在流行中のオミクロン株はのどの痛みや鼻水など、いわゆる風邪の症状を起こすことが多く、毎年の花粉症なのかコロナウイルス感染症なのかがわからないことがあります。また、コロナウイルス感染症に感染しても潜伏期間が数日ありますが、その間に花粉症の症状であるくしゃみなどによって周りにコロナウイルスを広げてしまうという可能性もあります。さらに、花粉症で目や鼻がかゆくなって指で触ってしまうと、手についたウイルスが粘膜に触れますので、ウイルス感染のリスクが上がります。
これら三つの問題を考えると、コロナ禍では花粉症の治療は普段以上にきちんとしておくほうがいいと言えるでしょう。
花粉症治療は「飛散開始日より前」に始めるのが最善
花粉症の治療については、「初期療法」といわれる治療が重要です。「初期療法」とは、花粉飛散開始前から治療開始することです。これによってピークの症状を弱め、症状が出ている期間も短くできます。
今年の飛散日をネットなどで調べることができます。たとえば、日本気象協会のページ(※)では、(2022年1月28日時点では)東京は2/11、大阪は2/23が飛散開始日と予測されていますので、この前に治療を開始するといいでしょう。
ちなみに、飛散開始日というのは、「1平方センチメートルあたり1個以上のスギ花粉を2日連続して観測した場合の最初の日」とされており、この前から飛散しているので、強いスギ花粉症を持っている人の場合は、飛散開始日の前から症状が出ることになります。症状があれば、花粉飛散開始予測日にかかわらず早めに治療を開始することをおすすめします。
※日本気象協会『2022年 春の花粉飛散予測(第3報)』(https://www.jwa.or.jp/news/2022/01/15627/)
花粉症の対策としてできること
花粉症についてはマスクやゴーグル型のメガネなども有効です。マスクはコロナウイルス感染症対策として使われている方が多いと思いますが、それが花粉症対策にもなります。他にも家に入るときに花粉を払っておく、表面がつるつるした素材のものを着る、上着は玄関にかけておく、なども有効な対策になります。
花粉症の治療は?
■薬による治療
アレルギー性鼻炎についてはガイドラインがありますが、抗ヒスタミン薬や鼻噴霧ステロイドなどを中心とした治療が行われることが多いと思います。鼻噴霧ステロイドは「生活の質を改善する効果は抗ヒスタミン薬より高い」という研究結果もあるぐらいで、きちんと使うことで効果が期待できます。
抗ヒスタミン薬は花粉症に対して非常によく使われる薬です。1日1回のものや2回のもの、眠気が出にくいと言われているものや、効果が不十分な場合に増量できるもの、貼り薬など様々な種類があります。種類によっては薬局で処方せんなしで購入できるもの(OTC)もあります。もちろん目の症状には目薬も有効ですので、診察時に相談してみても良いと思います。
■体質改善による治療
今シーズンには間に合いませんが、舌下免疫療法という「舌の下に毎日スギ花粉のエキスを置く」という治療もあります。これによって体質そのものを改善することもできます。スギ花粉症は自然緩解が少ない病気であると考えられており、特にお子さんのスギ花粉症では舌下免疫療法をすすめることが多いです。興味があれば近くの耳鼻咽喉科・小児科・アレルギー科などでご相談ください。
■手術による治療
手術については、レーザー手術が広く行われています。日帰り手術で可能で、粘膜の表面を変性させることで花粉症の症状を軽くしますが、シーズン前に行われることが原則なので、今シーズンに間に合わせるのは厳しいかもしれません。また、鼻の中の構造的な問題で狭く、鼻づまりの原因となっているような場合には広げるような手術(多くは内視鏡手術)が行われることもあります。気になる方は一度耳鼻咽喉科でご相談ください。
■「通常の治療では効果が弱い」「今年だけでも何とかしたい」という方は…
2年前のシーズンから「オマリズマブ」という注射薬が保険適用となっています。この薬は、アレルギー性鼻炎を起こす抗体である「IgE」を抑えることで症状を軽快するというものです。日本でも喘息や慢性じんましんに対して使用されてきましたが、季節性アレルギー性鼻炎に対してもいくつかの条件を満たした場合に使用できるようになりました。
やや高価な薬剤ではありますが、非常に効果の高い治療です。通常の治療では症状を抑えきれない方で、今年だけは何とか症状を抑えたい、あるいは多少高価な治療でもやってみたいという方には良い治療となる可能性があります。使用に際しては検査結果などでいくつかの条件を満たす必要があります。これについても、興味があれば近くの耳鼻咽喉科・小児科・アレルギー科などでご相談ください。
前田 陽平
大阪大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学助教
耳鼻咽喉科専門医、アレルギー学会認定専門医
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