(※写真はイメージです/PIXTA)

のどが痛い、空咳が続く、痰(たん)がからむ…。こうした症状がある場合、多くの人は風邪を疑うでしょう。しかし実は、風邪と間違えやすい「性感染症」の症状があることをご存じでしょうか。のどの症状が長引く場合は特に要注意です。銀座ヒカリクリニック・剣木憲文院長が解説します。

咳や痰は「のどの性感染症」の典型的な症状

皆さんはクラミジアや淋病という病気を知っていますか? これらは有名な性感染症であり、ご存じの方も多いと思います。しかし、これらが性器以外の部位、特に「のど」にも感染するという事実を知る方は少ないと思います。今日は「のどの性感染症」について詳しくお話させていただきます。

 

申し遅れました、わたくし性感染症を専門として地域の患者さんのご健康維持に努めております、銀座ヒカリクリニックの剣木憲文と申します。YouTubeやTikTokでは“ぽいぽん”の名前で啓発活動をしておりますので、お困りの際は「ぽいぽん!」と呼んでくださいね♪ それではお話を始めてまいりましょう。

 

のどが痛い、空咳が続く、痰がらみがある場合、通常は風邪かな?と思い内科を受診されますね。医師はお話を聞いて、のどが赤く腫れているのを確認し、肺の正常な呼吸音を確認して「呼吸器系の症状で、下気道の炎症(すなわち肺炎)にまでは発展していないので上気道炎。つまり風邪です」と診断します。しかし、実はこういった上気道症状は、「のどの性感染症」で見られる典型的な症状でもあるので注意が必要です。

「のどの性感染症」が誤診されやすいワケ

医師は6年間の学業の中で当然、性感染症も学びます。一般に、性感染症のリスクは不特定多数の方との性行為と言われます。しかし、一般的な内科の診察室で、患者さんのほうから「3日前に初めての相手とオーラル行為をしました」と話をされることはまずありえませんし、逆に医師のほうから、のどが痛い患者さん全員に「最近、新しいお相手との性的な接触はありましたか」と問うことも不自然です。まったく見当が外れたときには患者さんに不快な思いをさせてしまう可能性もあります。

 

最近のエビデンスでは風邪の原因の9割がウイルスとされており、昭和の時代のような「風邪には抗生剤を出しておくね」という診療はご法度です。抗生剤は細菌感染には効果的ですが、ウイルス感染には無効です。しかし性感染症の原因となるクラミジアや淋菌、梅毒は細菌であり、抗生剤を飲まなければ治りません。

 

このようにして風邪と誤診され、対症療法がなされて、こじらせてしまう患者さんを我々どものクリニックでは何度も診てまいりました。

 

これは余談ですが、昭和の時代にも性病患者さんは風邪と思い、一般内科を受診されたはずです。でも幸か不幸か「風邪には抗生剤を出しておくね」で、風邪ではなく性感染症が治っていた可能性があるわけです。つまり、現在の風邪に対するエビデンスに沿った診療をすることで、隠れたのどの性感染症の患者さんが路頭に迷う結果となってしまっている、という構図が見えてきます。

もしかして…と思ったら「性感染症専門」の施設へ

話を戻します。他方で、今の情報社会では、患者さんが自力で「のどの性感染症」の存在に気づき、うまく自己診断に至ることもあります(実際、私の発信しているYouTubeやTikTokをご覧になって来院される患者さんは後を絶ちません)。

 

しかし、それでもやはり一般内科で性的な相談をすることは難しいです。そういった方のために我々は性感染症を専門とするクリニックを開設いたしました。

 

内科医にとって性感染症の診療はそれほど難しい技術はいりません。しかし、先にも述べたように赤裸々なお話しを伺い、適切な検査・治療を行わなければ、診断にたどり着かず、最適な治療にも至りません。そこにこの診療の難しさがあります。

 

大学病院や総合病院でも性感染症のスペシャリストは多くらっしゃいます。しかし、そもそも患者さんには羞恥心から大きな病院を受診したいと思う方は少なく、ほとんどの医師がクラミジア、淋病、梅毒などを診察したことがないのが実態です。私も大学時代にはそうでした。診たことがない疾患を診ることほどストレスなものはなく、そのストレスは患者さんにも伝わり、不安を助長させてしまい、悪いサイクルに陥ってしまうのです。

 

お近くに性感染症専門のクリニックがなくても、最近では、診療科の一部に「性感染症内科」という標榜をされているクリニックを多く見かけます。そういったクリニックでは性感染症を診てもらえるので、自分の性的なお話を打ち明けやすいと思います。

 

そのようにして、どうにか検査・診断までたどり着くことができれば、あとは簡単です。効果的な抗生剤をチョイスし、患者さんが笑顔になるまで根気よく病気と向き合うことです。

のどを守るには「コンドーム」や「検査」が有効

最後に予防のお話ですが、オーラル行為のときにコンドームを使用する人は極めて少ないと思われます。使用できる方は使用し、使用されない方は定期的に検査をすることが大切です。

 

またコロナの件で無症状でも保菌している場合があることが一般の方にも広く浸透しましたが、性感染症もまた、感染した状態にもかかわらずまったく症状に出ない方がいらっしゃいます。つまり、相手が健康そうに見えても自分に性感染症がうつるリスクがあると考えることが自身の予防につながるというわけです。検査で陰性を確認し、安全な性行為を心がけましょう。

 

【動画/風邪ではないかもしれない、のどのイガイガについて話します!】

 

剣木 憲文

ぽいぽんchこと、性感染症内科医ノリ

銀座ヒカリクリニック 院長

※本記事は、最先端の「自分磨き」を提供するウェルネスメディア『KARADAs』から転載したものです。

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