きつい上に稼げなくなってしまったトラック運送業界は、慢性的な人手不足に陥っている。ドライバー不足を解消するため、新たな担い手の創造や生産性の向上など、あらゆるアプローチがとられているが…。ここでは「宅配ロッカー」について、物流ジャーナリスト・刈屋大輔氏が解説していく。 ※本連載は、書籍『ルポ トラックドライバー』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
宅配ドライバー不足「再配達は削減したい」…ユーザーに響かない事情 (※写真はイメージです/PIXTA)

「同居人に内緒で…」など、理由があれば利用する?

また、再配達の“手軽さ”も宅配ロッカーの利用を促すうえでは逆風だ。日本の宅配便サービスでは、営業所やコールセンターに依頼したり、ドライバーに直接連絡を入れたりすれば、再配達であっても希望する時間帯に自宅で確実に荷物を受け取ることができる。しかも再配達には追加料金が掛からない。

 

そのため、宅配ロッカーが利用されるのは、「宅配便会社の配達時間帯内には不在だが、どうしてもその日のうちに荷物を受け取りたい」や「同居人に荷物の存在を知られたくないので自宅外で受け取りたい」といった特別な理由がある場合に限定されているのが実情だ。

 

ある物流業界の関係者は

 

「例えば、『再配達分の荷物はすべて最寄りの宅配ロッカーで受け取ってください。自宅へのお届けを希望する場合は追加料金をいただきます』だったり、『宅配ロッカーで荷受けしてくれれば、料金を値引きしたり、ポイントを付与したりします』といったような抜本的なルール改正でもないかぎり、宅配ロッカーの利用率は低迷が続くだろう」

 

と分析する。

 

利用を促す目的で、発送する荷物を宅配ロッカーで受け付けるという試みも始まっている。ネットを通じて個人間でモノを売買するフリマアプリの「メルカリ」は2014年11月、「PUDOステーション」から荷物を発送できるサービスを開始した。

 

従来、荷物の発送は宅配便の営業所やコンビニ店舗などで、対面で行う必要があったが、宅配ロッカーという24時間365日対応が可能な“無人”の窓口を用意することで、「メルカリ」ユーザーの利便性を高めるのが狙いだ。

 

もっとも、年間約43億個(2014年度実績)の宅配便取扱個数のうち、フリマでやり取りされるような個人間取引であるC2Cの荷物が占める割合は、全体の10%にも満たないとされる。そのことからすると、宅配ロッカーに発送窓口としての機能が加わったとしても、利用率の改善に与えるインパクト(効果)は限定的と言えるだろう。