きつい上に稼げなくなってしまったトラック運送業界は、慢性的な人手不足に陥っている。ドライバー不足を解消するため、新たな担い手の創造や生産性の向上など、あらゆるアプローチがとられているが…。ここでは「宅配ロッカー」について、物流ジャーナリスト・刈屋大輔氏が解説していく。 ※本連載は、書籍『ルポ トラックドライバー』(朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
宅配ドライバー不足「再配達は削減したい」…ユーザーに響かない事情 (※写真はイメージです/PIXTA)

利用率は1%未満…「ヤマトのドライバー」の指摘

日本郵便は自前の宅配ロッカー「はこぽす」を展開してきたが、2019年6月からは「PUDOステーション」の利用も開始した。従来、同社では2020年度までに「はこぽす」を国内約1000ヵ所に設置する計画だった。

 

しかし、独自路線から方向転換し、「PUDOステーション」という選択肢を新たに加えたのは、「ゆうパック」の受け取り窓口を増やすのが狙いだ。

 

■宅配ロッカー利用率は1%未満

 

ヤマトが構築してきたインフラに、佐川急便や日本郵便が相乗りする格好となったことで、宅配ロッカーの整備に対する宅配大手三社の足並みは揃った。それによって、当初懸念されていた「宅配便の事業者ごとにロッカーが各所に乱立する」という非効率な環境が生まれることはひとまず避けられた。

 

ただし、宅配ロッカーには大きな課題がある。利用率が極端に低いという点だ。内閣府の調査(2017年度)によれば、再配達の荷物を宅配ロッカーで受け取ったユーザーは1%にも満たない。さらに、ヤマトでは「宅急便」の取扱個数全体のうち、宅配ロッカーやコンビニなど「自宅以外」で荷物を受け取った割合は6%程度にすぎないという。

 

ヤマトのあるセールスドライバーは

 

「不在だった荷物を宅配ロッカーに転送するケースは数日に1件という程度。はじめから配達先が宅配ロッカーに指定されている荷物もほとんどない。駅や店舗よりも稼働率が低いのは営業所に設置している宅配ロッカー。営業所まで出向いてくれるお客さんは窓口で対面して荷物を受け取ってくれる。わざわざ宅配ロッカーから荷物を引き取ろうとはしない」

 

と指摘する。

 

宅配ロッカーの利用が思うように進まないのは、荷物はできるだけ自宅で受け取りたいというユーザー側のニーズが根強いことも影響している。

 

言うまでもなく、駅や店舗の宅配ロッカーを荷物の配達場所に指定すれば、ロッカー〜自宅間を運ぶのはユーザー自身となる。とりわけ重量や容積のある荷物の場合、自宅までの“横持ち輸送”はユーザーにとって肉体的な負荷が大きい。