年金の繰り下げ受給…受取総額、損益分岐点は?
繰り上げ受給・繰り下げ受給を語る際に、どうしても気になるのが損益分岐点。受給総額がどの時点で上回るのか・下回るのか、ということです。
仮に70歳で受給開始したとすると、81歳以上生きれば、繰り下げ受給をしたほうが受給総額は上回ります。
仮に75歳で受給開始したとすると、86歳以上生きれば、繰り下げ受給をしたほうが受給総額は上回ります。
昨年4月に施行となった「高年齢者雇用安定法」では、「70歳までの就業確保措置」が事業主の努力義務となりました。今後、歳を重ねても働き続ける人が増えるでしょうから、繰り下げ受給を選択する人も増えていくと考えられます。
【2020年改正高年齢者雇用安定法における高年齢者就業確保措置】
【対象となる事業主】
- 定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主
- 65歳までの継続雇用制度を導入している事業主
【対象となる措置(努力義務)】
以下(1)~(5)のうち、いずれかの措置を講じるよう努める必要がある
(1)定年を70歳に引き上げ
(2)70歳まで継続雇用する制度の導入
(3)定年制の廃止
(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
- 事業主が自ら実施する社会貢献事業
- 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
厚生労働省『令和2年簡易生命表』によると65歳時点の平均余命は男性で20.05歳、女性で24.91歳(関連記事:『【2021年】平均余命早見表…あと何年生きられるのか?』)。現在、女性であれば75歳で受給開始をしても、受給総額では得をする可能性は高いといえます。
ただし損得で繰り上げ受給・繰り下げ受給を考えるのは難しいもの。損益分岐点を見極めようとしても、平均余命通りに生きられるかも、いつ病気をしてしまうかも誰にもわかりません。年金は老後の生活を支えるものであり、それだけで生活できる人は少数派。多くは貯蓄を取り崩して生活を送っています。いつ年金を受け取るかに固執するのではなく、老後を見据えて計画的に資産形成を進めるころが、現役世代の人たちにとっては重要です。