メンバーがモラルを保って能力を高めあい、失敗や災害は最小限にとどめ、誰もがストレスなく働ける――そんな理想の製造チームをつくるためには何をすべきか、工場での現場監督としてのキャリアを持つ吉弘たけき氏が解説していきます。
「デキる責任者」と「ダメな責任者」…考え方の決定的な違い (※写真はイメージです/PIXTA)

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「人間は必ずミスをする」を前提に考えることの重要性

監督者になって数年。いろいろと試しながら、また、失敗もしながらコツコツとやってきた結果、仕事が楽しくなりました。これは私の経験からです。現在は監督者も若くなり同じ悩みがあるのではないか、と思います。

 

私が思う監督者の理想像は、仕事を行う上で、メンバーの能力を引き上げ、信頼関係を築き、仕事がやりやすいように環境を改善しながらメンバーを守りやすい作業標準を作り、楽にスムーズに仕事ができるようにすることです。仕事をする中で、わかりやすい作業のフロー図(手順)などを作り、新人が来ても誰がやっても、間違えないようにすることと思っています。

 

つまりリスク管理をしておくことです。メンバーがトラブルを起こしたりしたら、必ず4M(人・設備・材料・方法の略)を含めた要因についてなぜなぜ分析をし、原因を見つけては対策、試行、対策を繰り返し、メンバーに同じ失敗をさせないことです。

 

メンバーは家族と思うことで、監督者の皆さんの行動が必ず変わってくるはずです。責任者として、メンバーが問題を起こした、メンバーがルールを守らなかった、ではなく、監督者がメンバーに問題を起こさせた、監督者がルールを守らせきれなかったと、常に反省すべきです。

 

都合の悪いときだけメンバーのせいにしてはいけません。人間は必ずミスをするものです。メンバー任せでは必ず失敗します。完璧な人はいません。

 

だから、日頃からメンバーの行動や表情などをしっかり見て、失敗する前に助けることが大事です。ルールを守っているかなど、陰で見守ることは漢字の「親(立木の横から陰で見守る)」と同じなのです。必ず変化点を見つけたり兆候点を見つけて、ハード的にできるものは改善する。関所を設けないといつか必ず失敗し、家族を守れなくなります。

ルールを遵守させるために…監督者が意識すべきこと

セクハラ、飲酒運転、暴力、パワハラ、災害や品質トラブルの隠蔽など、さまざまな社会問題が発生しています。その大きな原因は、監督者など上司がさまざまな経験を積んでいない若い世代に変わり、メンバーへ噛み砕いて説明できず、上層部から言われた通り一遍の説明で終わるために、メンバーの知識、意識、行動までつながっていないのではと思います。知識と意識と行動は別物です。

 

品質で言えばQC手法、安全、防災で言えば、法的教育、資格、RA、KY、3S、難しい熱中症教育、会社のルールなどがあります。そして知識を身に付けるのと実践するのとは、違います。いくら知識を身に付けても実践する意識がないと行動できません。意識があっても実践しなければ意味がありません。ここが大事なところです。

 

例えば、コンビニの駐車場で「事故が多いのでバック駐車をしてください」と言われても、なぜなのかわからないし守りません。駐車場へ入るときは前方駐車が便利です。しかし買い物が終わり出るときには、ドアを開ける、買った物を置く、エンジンをかける。シートベルトをつける。このときには周りの状態は変化しています。

 

そこで、バックで片方しか見えず出てしまいます。これなら当然事故が多いわけです。逆に最初にバック駐車をしておけば、すぐに発車できます。ただし左右の車と人には注意は必要です。

監督者一人では、メンバー全員を見張れない

このように、守れと言っても、なぜなのかを教育しないと知識があっても意識がされないので行動に現れません。だから本当に守っているかは現場で確認しないとわかりません。交通関係は会社外なので確認できませんが、社内ではモニタリングが重要です。守っているかは隠れて見ること。監督者の姿を見せれば殆んどのメンバーは守るでしょう。

 

肝心なのは、誰も見ていなくても守っているかです。守っているところも、守っていないところも見てやらないと最後には誰も守らなくなります。それが人の心理なのです。これができないと問題が当然発生します。監督者一人ではメンバー全員は見られません。

 

そのために、本当に守っているかをウェブカメラや巡回のときにしっかり確認することが大切です。ただ、結果が出て守っていないことがわかる場合もありますが、失敗してからわかるのでは遅いのです。自分の目で確かめ、守っていたらきちんと褒めることが大切です。

 

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吉弘 たけき

1954年生まれ。高校卒業後、会社へ入社。 監督者経験15年、マネージャー10年。