「副業禁止」…理由は明確だが、後を絶たない実情
その理由はほかでもない。疲労による体調不良が原因となって交通事故や災害を発生させることがないよう、トラックドライバーには乗務終了後、継続8時間以上の休息期間を確保することが法的(厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準=改善基準告示」)に求められている。
本業での仕事を終えた後や休日に、副業としてハンドルを握ることは、このルールに抵触する恐れがあるからだ。
それでも副業ドライバーは後を絶たない。「営業所の上司も他社で配達員の仕事に就いていることは薄々わかっている。しかし、働き方改革で収入が減っていることを承知しているから、見て見ぬふりをしているというのが実情だ」と松本さんは指摘する。
違反のリスクを承知しながらも副業ドライバーの受け入れに積極的なトラック運送会社も存在する。通販商品の配達サービスなどを展開する、ある軽トラ運送会社もそのうちの一社だ。
同社では、ヤマトのような大手宅配便会社に籍を置く副業ドライバーたちを、教育や研修をほとんど必要とせずに現場に投入できる「宅配便の業務ノウハウを身につけた即戦力」(同社経営幹部)として重宝している。
たとえ法的に問題があるとしても、需要がある以上、より多く稼ぐためにトラックドライバーたちが副業でもドライバーとしてハンドルを握るという流れはしばらく止めることができないだろう。
刈屋大輔
青山ロジスティクス総合研究所代表