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精神科と心療内科の「本来の違い」
本来は、精神科と心療内科は異なる専門分野になりますが、後述させていただく通りで、実際には混在してしまっています。まずは本来の違いについて、簡単にご紹介していきます。
■精神科とは?
精神科は、おもに「こころ(精神)」に不調を感じたときに受診するところです。
同時に身体症状を感じる患者さんも多いため、最初に内科を受診する方もいますが、本来であれば精神科で治療するべき病気です。
<こんな不調は精神科へ>
●うつ病
●気分変調症
●双極性障害
●不安障害(社交不安障害やパニック障害など)
●強迫性障害
●統合失調症
●摂食障害
●発達障害
●精神遅滞
精神科では、脳に作用するお薬を扱っていくことで心の安定を図っていきます。ですから精神科医は、このようなお薬の調整に慣れているので、睡眠障害や適応障害などでお薬の果たす役割が大きい場合も、精神科医が適切といえます。
■心療内科とは?
心療内科は、おもに「からだ」に不調を感じたときに受診するところです。生活習慣病のような内科の病気も、ストレスが悪化の原因として大きく関係している場合もあります。こういった部分もふくめて、このような心身が相関して生じる「心身症」の治療を行っていきます。
<こんな不調は心療内科へ>
●緊張型頭痛
●過敏性腸症候群
●自律神経症状が中心の病気
●高血圧
●糖尿病
●喘息
上記のように、身体症状が目立っていてストレスと関連が深い場合に、心療内科医が適切といえます。
精神科と心療内科の「現状」
ここまでは、精神科と心療内科の本来の治療領域についてご説明させていただきました。ここからは、精神科と心療内科の現状をお伝えします。
■心療内科か、精神科か…掲げる診療科名は「医師次第」
2021年12月現在の日本では、医療機関に掲げる「XX科」をどれにするかは、ルールはありますが医師の裁量に任されています。そのため、患者さんが受診しやすいように心療内科の名前を掲げることが多いのが現状です。精神科よりも心療内科のほうが柔らかい響きですので、患者さんにも受け入れやすいのです。
それぞれの専門医の数を比較しても、心療内科専門医は圧倒的に少ないので、ほとんど精神科医が心療内科を掲げているのが実情です。
■オーバーラップしている領域もある
睡眠障害や自律神経失調症、適応障害といった病気は、心療内科と精神科のどちらともつきません。
たとえば自律神経失調症では、ストレスによって自律神経のバランスは崩れて自律神経失調「状態」となってしまいます。そのストレス因として、心の反応によるものであることもあれば、精神疾患による場合もあります。
また、本来は精神科で治療するべきうつ病も、頭痛や下痢などの「からだの不調」を感じて、心療内科でもなく一般内科を受診される方も多いです。つまり、厳密に言えば「精神科で治療するべき症状」「心療内科で治療するべき症状」はわかれているものの、症状によっては両方の科で治療が行われているのが現状なのです。
結局「精神科」「心療内科」のどちらを受診するべき?
「こころ」と「からだ」は密接に絡み合っているため、精神科と心療内科の距離が近くなるのも当然と言えるでしょう。そのため、精神科医も心療内科医も、お互いの領域の患者さんを診る機会は少なくありません。どちらを受診しても、標準的な治療は受けられるので安心してください。
精神科医も心療内科医も、それぞれの診療できる範囲を超えてきたら、患者さんにお伝えして適切な医療機関へのご紹介をいたします。
こころの医療は医師との相性もありますので、受診いただいた際に「相談しながら良くなっていくイメージをもてるか」を大切にしていただければ良いと思います。
医療機関を運営していてわかりますが、口コミは悪いことばかりが書かれてしまい、良いことはあまり書いていただけません。ですから悪い口コミに振り回されず、まずは受診いただいた「あなたの印象」を大切に、信頼できる主治医を見つけてください。
まとめ
今回は、精神科と心療内科の違いについて解説しました。ポイントを、以下にまとめます。
●「こころ」に不調が出ている場合は「精神科」を受診する
●「からだ」に不調が出ている場合は「心療内科」を受診する
●どちらに行けばいいか迷う場合は、どちらを受診しても標準的な治療は受けられる
受診してもいいか迷った場合は、医療機関に電話をして、ご自身の症状を伝えたうえで治療可能か確認するのもいいでしょう。
医療機関を探すことに時間を取られた結果、症状が悪化してしまうのは避けたい事態です。心身に不調を感じた際は、できるだけ早めに医師にご相談ください。
大澤 亮太
医療法人社団こころみ 代表医師
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