「ゼネコン」とは、元請負者として各種の土木・建築工事を一式で発注者から直接請負い、工事全体のとりまとめを行う建設業者を指します。本記事では、株式会社白川工芸社・代表取締役の中根義将氏が、ゼネコンマンの働き方について紹介していきます。
元ゼネコンの現場監督が語る「日本の工事現場」…職人たちとの働き方 (※写真はイメージです/PIXTA)

5分の遅れで「1時間残業」も…厳しい工事現場の実情

よくコンクリート工事では、生コンを発注した数量に対して、現場で実際に使った数量が少なく済んでしまうことがある。余った生コンは廃棄処分になるから、現場にとってみれば全くのムダ使いになってしまうので、上司からは必ず「生コンを余らせるな!」という命題が若手現場監督には与えられる。

 

この「生コンを余らせない」というスキルを習得するのは一筋縄ではいかない。計算能力、判断力はもちろんのこと、コンクリートの圧送作業に追われながら刻々と迫る、その日最後の生コン車手配のタイミングを計らなければいけない。

 

5分でも間違えれば、現場に生コン車が到達する時間が遅れて残業になってしまうことがあり、職人から大クレームが来る。たった5分早く発注していれば17時で帰れたかもしれないものを、そのせいで18時まで残業になってしまっては怒る気持ちもわかる。

 

そんなプレッシャーとの戦いも乗り越えなければいけないからだ。やることがたくさんある上に、制限時間が迫ってくる状況では、何かひとつの作業に集中することができないのは本人の能力のせいではないだろう。

 

多くの若手ゼネコンマンはこの複数の業務処理が行えず、気づいたら生コンの発注数量を誤ってしまうのだ。しかし、これも僕は、ほとんど余らせたことがない。なぜなら、各持ち場の職人が協力してくれるため、僕は生コンの残量の計算に集中できた。最後の発注手配をかけるための、最適な環境が整っていたのだ。

力を貸してくれるかどうかは「相手」が決めること

ここで注意してほしいのは、誰かの力を借りることに遠慮する必要はないけど、力を貸してくれるかどうかは、相手が決めるってことだ。

 

コンクリートの配管をみんなに運んでもらうことも、もし僕が口頭で「やれ!」と指示するだけでは絶対に誰も動いてくれなかった。僕が率先して動き、誰よりも作業服を汚してアピールする(本当にあえて汚していたのがバレた時は呆れられた)ものだから、可哀想に思えてきたのだろう。

 

優しい職人が手伝ってくれ始めたのだ。たった5分くらい、そんなに頑張らなくても誰か手伝ってくれるだろうし、むしろそんなに頑張らないと手伝ってもらえないくらいなら1%自分でやった方が楽だ、と思う人もいるだろう。

塗装店社長が語る「泥臭い経験も必要」の真意

確かに、わずか1%でも誰かの力を借りることだって、自分の力を振り絞らないとできない。誰だって、嫌いな奴を手伝いたくないだろうから、力を借りるってことは、その人にある程度好かれていないと難しい。誰かに好かれるよう努力をするのは相当大変なものだと思う。

 

人たらしの才能があったり、強いカリスマ性がある人は別として、僕や若手のゼネコンマンみたいな普通の人間は、泥臭い作戦で行くしかない。

 

でも、一度うまく回り始めたら、その先は指数関数的に成果が伸び始めることは僕の体験で実証済だ。損して得をとる、とは少し違うかもしれないが、スマートゼネコンマンになるためには、ある一定期間の泥臭い経験も必要かもしれない。

 

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中根 義将
福井大学卒業。新卒入社した株式会社大林組にて、2011年に発生した東日本大震災の復旧工事を中心に、7年間にわたり現場監督として活躍。復興活動に携わる中で、地元・神戸市に恩返しをするのが使命と悟り、2015年に祖父の代から続く株式会社白川工芸社へ。2017年、同社代表取締役就任。大林組時代に培ったマネジメント力をもとに「人を活かした経営」、「建設業界の働き方改革」に取り組み、それまで三期連続赤字、債務超過であった同社を1年で黒字化。2年目には債務超過も解消し、V字回復を果たす。現在も「地域に愛される次世代の塗装店」を目指し、幅広い活動に取り組んでいる。 著書に『スマートゼネコンマン』(幻冬舎ルネサンス新社)、『ペンキ屋の若旦那が教える仕事の流儀』(kindle)がある。