日本人は「雇用」の代わりに「低賃金」を受け入れてきた
世界と比べて日本の失業率が低い理由はさまざまにいわれていますが、まずは法律。労働基準法第16条では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされています。「解雇権濫用の法理」がしっかりと記され、日本の労働者は法的にも守られているといえます。
また「終身雇用制」という日本特有の慣わしも低失業率の所以だといわれています。近年、年功序列とともにすでに崩壊したといわれて久しいですが、一方でまだ続いているといわれています。厚生労働省のデータによると、いわゆる“生え抜き社員”は大卒社員で平均5割程度はいるとされています。減少傾向ではありますが。まだ「同じ会社で長く働くこと」が多くを占めています。
終身雇用制は長期的に人を育てることのできる制度というメリットがある一方で、適切な労働力の配置が難しいとされています。特に日本の9割を占めるといわれる中小企業ではその傾向が顕著。それゆえ日本の労働生産性は低く、賃金が上がらないとされています。
購買力平価ベースの平均年収を世界と比較すると、2020年、日本は38,515米ドルで世界主要国35ヵ国中22位です。
【主要国「購入力平価ベースの平均年収」】
1位「米国」69,392米ドル
2位「アイスランド」67,488米ドル
3位「ルクセンブルク」65,854米ドル
4位「スイス」64,824米ドル
5位「オランダ」58,828米ドル
6位「デンマーク」58,430米ドル
7位「ノルウェー」55,780米ドル
8位「カナダ」55,342米ドル
9位「オーストラリア」55,206米ドル
10位「ベルギー」54,327米ドル
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19位「韓国」41,960米ドル
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22位「日本」38,515米ドル
出所:OECD2020年データ
30年前の1990年と比較して104%という水準です。一方で、米国は147%、英国は144%、フランスは131%、韓国は192%。日本だけが賃金があがっておらず、世界から取り残されている、という状況です。
不良債権問題、ITバブルの崩壊、リーマンショック、東日本大震災、そして新型コロナウイルス感染……大きく揺るがした大問題に直面しても、日本では雇用は守られてきました。その犠牲になったのが、わたしたちの賃金だったともいえるでしょう。
日本だけがジリ貧という状況を受け入れ、未曽有の危機に面しても安定した雇用を望むか、不安定でも給与が増えていくことを望むか。どちらを選びますか?