「でも、同僚の彼は早く帰っているじゃない?」
「ああ、あの人ですか。あの方は上長とは長い付き合いで、きっと気心知れた仲だから、大丈夫なんですよ」
「なるほど、そういうことか」
冷静に振り返ると、明らかに「理不尽」なことです。納得できないのなら、上司と直談判という手もあります。しかし、上司の方針である以上、少なくとも、ある程度の人間関係ができあがるまでは、従ったほうが「身のため」です。以降は割り切って、上司が帰るまで「付き合い残業」を決め込みました。
「付き合い休日出勤」を割り切るのも一つの処世術
土曜日出社についても、同じような経験があります。その部署の責任者は、ほぼ毎週、決まって土曜日にも出社していました。
部下に対しても、「今週の土曜はどうするんだ?」と聞いてきます。当然のことながら、返事はひとつ、
「もちろん出勤です!」
となるわけです(「そう言わされていた」というほうが、適切な表現かもしれません)。
はたして、土曜日がくるたびに社員一同、雁首揃えて私服で出社し、特にやることもない職場で、何となく過ごします。
「それじゃ、先に帰るぞ」
責任者が部屋から出るのを見届けるやいなや、
「待ってました!」
とばかり、皆、そそくさと帰路につくのです。昨今は、このような「付き合い残業」や「付き合い休日出勤」は減っているのかもしれませんが(そう願っております)、過去には、間違いなく、至るところで「存在」していました。
まだ残っているとしたら、実に由々しき事態です。早急に改善してもらう必要があります。
しかし、こればかりは部下ひとりの力では、どうしようもありません。人事権を有する上司が、そのスタイルを踏襲する以上、ここはひとつ割り切って「ギリギリのお付き合い」にチャレンジする、という選択肢もあります。
あくまでも、次善の策としてですが。
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中山てつや
1956年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。日系製造メーカー及び外資系IT企業を経て、主にグローバル人材を対象としたキャリアコンサルティングの仕事に携わる。