新型コロナウイルス感染拡大の影響で、教育現場ではリモート授業の導入が進んでいます。本記事では、慶應義塾普通部、東京海洋大学、早稲田大学等で非常勤講師をしながら「海外教育」の研究を続ける、本柳とみ子氏の著書『日本人教師が見たオーストラリアの学校 コアラの国の教育レシピ』より一部を抜粋・再編集し、教育先進国である「オーストラリア」の教育現場について、日本と比較しながら紹介していきます。
忘れ物や授業態度で減点されてしまう…「日本の教育」はおかしい?【教育学博士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

部活動の代わりに様々な「課外活動」が存在する

オーストラリアの学校には部活動がない。地域のスポーツクラブや公園、公共施設などでスポーツやパフォーミングアーツを楽しむ生徒もいれば、音楽活動をする生徒もいる。

 

高校生の中にはアルバイトをする生徒も少なくない。小中学生でも家庭や近所の家の仕事を手伝ったりして小遣い稼ぎをする子どもがいる。日本のように塾に行くという生徒はほとんどいない。塾そのものがオーストラリアにはないのだ。

 

いずれにしても、放課後は学校以外の場所で思い思いに時間を過ごすのがオーストラリアの子どもたちだ。

 

では、学校で放課後の活動がまったくないかというとそうではない。課外活動はいろいろある。みんなが帰った放課後の学校で、スポーツや音楽活動をしている生徒たちがいる。いわゆるクラブ活動だ。

 

参加は希望制で、費用がかかることもある。定員が決められており、オーディションが行われることが多い。活動時間は1時間から1時間半くらいで、日本のような長時間活動はない。明るいうちに終わるのが一般的だ。

 

この活動は朝や昼休みに行われることもある。スポーツ、音楽、ダンス、演劇、美術などの他に、最近はプログラミングやコーディングなどITの分野も増えている。興味関心のある分野や授業で学んだことをもっと深めたいなど、参加する生徒の動機は様々だ。

 

指導はその分野の知識と技能を有する者が行う。教師が指導することが多いが、外部の指導者が招聘されることもある。日本のように経験のない教師が指導を任されるということはない。指導者には指導料が支払われ、教師にも支払われることが多い。

 

補習授業も盛んだ。ホームワーククラブという学習支援プログラムが多くの学校で実施されている。教科ごとのチュートリアル(個人指導)を定期的に行い、授業のフォローアップに役立てる。数学と英語のチュートリアルを参観したことがある。

 

いずれの教室も生徒でいっぱいだった。ほとんどの生徒が授業で出された課題に取り組み、教師から個別に指導を受けていた。どのチュートリアルも1時間ほどで終了した。

 

[図表]クラブ活動の例

 

***********************************************

教育学博士
本柳 とみ子


公立中学校で26年間教鞭をとったあと、大学院で海外の教育について研究を始める。その後、慶應義塾普通部、東京海洋大学、早稲田大学等で非常勤講師をしながら研究を続ける。2012年、早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)