超低金利時代の今、大手銀行の預金金利は0.001%程度しかありません。銀行でお金を寝かせておくのがもったいないと思えるのなら、リートに投資して配当を得るというのも有力な選択肢の1つでしょう。ここではリートと呼ばれる「不動産投資信託」より、初心者でも押さえておきたい3つの銘柄を見てきます。本稿に記載されている数字や情報は執筆当時(2021年2~3月)のものですが、プロ投資家の視点を通して見ることで、資産形成や経済見通しのヒントが得られるはず。※本連載は菅下清廣氏の著書『アフターコロナ相場で資産を増やしなさい 投資家が注目する88銘柄はこれだ』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。
超低金利時代の今、投資初心者が押さえるべき「不動産投資信託」3つ (※写真はイメージです/PIXTA)

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星野リゾート・リート投資法人

■資産規模は順調に推移中…誰もが知っているリゾート運営会社

誰もが知っているリゾート運営会社である星野リゾートがスポンサーとなっているリート投資法人。ホームページには、美しい写真とともに、「ニッポンの観光産業の成長の果実を享受できる仕組みを作る」「投資主が投資口の保有を通じて、ニッポンの観光産業の果実を享受できる仕組みの実現を目指しており、これにより投資主価値の継続的な拡大を図っていきます」というメッセージが掲げられています。

 

2021年4月期の保有物件数は63件。「星のや」「星野リゾート リゾナーレ」「星野リゾート 界」といった人気リゾート施設の名前が挙がっている一方で、資産規模の推移というグラフによると、全体で1656億円のうち、「星野リゾートグループ運営」は450億円超であり、グループ会社以外への投資も積極的に行なっていることが窺えます。

 

また、ホームページトップには、「確定分配金」「予想分配金」が非常にわかりやすい形で明記されています。2020年10月期(第15期)は、投資口1口あたり1万2860円で確定。2021年4月期(第16期)は、2021年3月執筆時点では6390円の予想、実際には6406円で確定。現在、10月期(第17期)は6344円の予想となっているようです。

 

株価:2021年11月1日時点で740,000円(※執筆当時2021年3月では618,000円)
[図表1]星野リゾート・リート投資法人(東証リート 3287) 株価:2021年11月1日時点で740,000円(※執筆当時2021年3月では618,000円)

大江戸温泉リート投資法人

■コロナ禍の影響で下落したものの、配当利回りは預金金利を圧倒

ホームページに掲載されているポートフォリオを見ると、北は宮城県にある「大江戸温泉物語 幸雲閣」、南は長崎県の「大江戸温泉物語 長崎ホテル清風」まで、14の温泉関連施設を擁していることがわかります。

 

また、「本投資法人は、主として大江戸温泉物語グループが運営する、大江戸モデルが導入された温泉・温浴関連施設へ重点投資を行います」とあるように、大江戸温泉グループとの相互成長を目指す形で設立されています。

 

ただ、コロナの影響によって、温泉施設は大きな打撃を受けることになりました。大江戸温泉リート投資法人も例外ではなく、2019年11月5日に10万円だった価格は、2020年3月19日には4万5000円と、半値以上下落(図表2)。その後、上下はありますが、5月26日に7万7500円、10月8日に7万4900円、そして2021年2月執筆時点も7〜8万円台近辺を維持しています。

 

株価:2021年11月2日時点で81,400円(※執筆当時2021年3月では81,700円)
[図表2]大江戸温泉リート投資法人(東証リート 3472) 株価:2021年11月2日時点で81,400円(※執筆当時2021年3月では81,700円)

 

1口あたりの分配金は2020年11月期(第9期)が1996円で確定、2021年5月期(第10期)は、2021年3月執筆時点では1922円の予想、実際には1970円で確定。現在、11月期(第11期)は1810円の予想となっています。

 

2019年の11月に比べ、価格は落ちているとはいえ、現在の配当利回りは4%弱と高水準で推移しているため、銀行預金と比べると、雲泥の差があると言えるでしょう。

 

また、投資優待制度として、対象施設で使える利用券1000円分が保有口数に応じてもらえるという特典もあるようです。温泉好きの人には魅力的かもしれません。

三菱地所物流リート投資法人

■多少のことではダメにならない…一時下落したものの高値圏に復活

著書『アフターコロナ相場で資産を増やしなさい』では、一貫して「誰もが知っている株は買うな」というメッセージを発信していますが、リートは別物と考えていただくのがよいでしょう。たとえば、三菱地所物流リート投資法人は、多少のことではダメにならないイメージどおり、大手の風格が漂っています。

 

2020年2月21日に42万5000円だった価格は、一度は3月19日に25万600円と下落しますが、8月3日には49万9000円と下落前よりも高値をつけ(図表3)、2021年3月執筆時点では42万円台、11月現在も49万円台と高値圏にあります。

 

株価:2021年11月2日時点で490,000円(※執筆当時2021年3月では427,000円)
[図表3]三菱地所物流リート投資法人(東証リート 3481) 株価:2021年11月2日時点で490,000円(※執筆当時2021年3月では427,000円)

 

第10期(2021年8月期)の確定分配金は6764円。第11期(2022年2月期)、第12期(2022年8月期)の予想分配金はそれぞれ、7099円、6910円。11月2日時点の配当利回りは2.8%程度。

■リートを買うなら「IPO(新規上場)」が狙い時

リートに投資する際は、比較的値段の安いIPOのタイミングで購入を検討するのもおすすめです。私はSOSiLA物流リート投資法人が2019年の年末に上場した際に投資しましたが、IPO発行価格の10万3000円を上回る初値11万2500円をつけたのち、最終的には1.5倍程度になりました。結果、配当がどかんと来たのを記憶しています。

 

以上、初級編の銘柄を紹介してきましたが、これだけでも、資産を増やすためのヒントがたくさん詰まっています。投資はある種の情報戦であり、情報を持っているか否かだけでも随分と変わってきますので、引き続き情報への感度を維持して、自ら興味をもって投資先を探し続けていただければと思います。

 

 

菅下 清廣

スガシタパートナーズ株式会社 代表取締役社長

国際金融ストラテジスト

 

 

※掲載されている数字や情報は執筆当時(2021年2~3月)のものです。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

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