築古の賃貸住宅、貸店舗を一新!収益アップと将来を見据えた「再生計画」

倒壊の危険すらある築古物件も、建て替えという決断が、不安解消と収益確保という大きなプラスを生み出します。高齢オーナーは相続、借地利用のオーナーは借地権など、ケースによってさまざまな問題はありますが、法的なアプローチで乗り越えることが可能です。本連載では、収益不動産の法律問題に詳しい新麴町法律事務所の桝井眞二弁護士と、パナソニック ホームズの榎本克彦氏との対談により、築古収益物件のリスク解決と、建て替えによる収益向上について見ていきます。

老朽化した収益物件の建て替えには、一定の時間が必要

多くの築古の賃貸物件の場合、空室率の上昇と家賃の減額は避けられません。また、これまでの記事でも解説したとおり、老朽化による倒壊リスクなど、時間の経過とともにさらに深刻な問題も内包するようになります。

 

建て替えが最も有効な解決策だと理解していても、多額の支出を嫌って目先の修繕でごまかしているオーナーは少なくありません。しかし、気づけば予想以上に費用が膨らみ、しかも見合った効果が得られない、という事態になりがちです。

 

 

これまでパナソニック ホームズとともに賃貸物件の建て替えに関わってきた、新麹町法律事務所の桝井眞二弁護士は、大規模修繕や建て替えについての考えが、時代の流れとともに変化しているといいます。

 

「昔と今とでは、賃貸物件の建て替えへの意識に変化が見られます。かつては老朽化で賃貸経営が行き詰まり、にっちもさっちもいかなくなってから着手するケースが大半でした。しかし最近は、相続や家族構成の変化、万一の離職の可能性など、先々のイベントやリスクを見据えた長期的なプランを、早い段階から検討するオーナーも増えています」

 

パナソニック ホームズ特建営業センター所長の榎本克彦氏も、実務的な面からこのように述べています。

 

「建て替えには、綿密なプランニングやシミュレーションはもちろん、並行して、立ち退き交渉などの課題も伴います。したがって、それなりの時間を要するという前提で取り組むべきだといえるでしょう」

高齢化したオーナーの「リスク回避」に役立つ制度

プランニングの段階で、その後の相続についても考えておくことが大切です。複数の相続人がいる場合は、資産分配の方法について、専門家の意見を仰いだほうが失敗のリスクが減らせます。

 

築古賃貸物件の建て替えは、相続税の負担軽減としても有効です。1億円を現金として保有するのではなく、同等の価値の不動産にすれば、相続税制上の評価額は大幅に低くなり、また、賃貸不動産の建設のためのローンを物件の評価額から差し引くこともできるため、相続税の課税圧縮効果が得られます。詳細については、2021年4月の連載、『優れた建築技法と緻密な賃貸経営プランで実現する「持て余し物件」収益化計画』の第4回記事、『相続対策のつもりが…次世代を苦しめる「老朽アパート」の恐怖』をご参照ください。

 

「揉め事を防ぐには、やはり遺言書作成がお勧めです。オーナーが自分の意思を明確にしておかないと、遺産分割協議が紛糾する可能性もありますし、もし相続人の配偶者や関係者が口を挟めば、話はさらにややこしくなります」(桝井弁護士)

 

オーナーの高齢化や病気の影響で、遺言書をはじめとする相続対策を行えなくなるリスクについては、第2回の記事『老親保有の老朽アパート「どうにかする」を信じて後悔…認知症発症で打つ手なし』に詳述しましたが、そこでも触れた「任意後見制度」の活用については、今後ますます需要が高まると想定されます。

 

厚生労働省発表の『成年後見制度の現状』(令和3年3月)によると、成年後見制度の利用者数の推移(平成27年~令和2年)は、各事件類型の利用者数ともに増加傾向です。

 

成年後見制度の各事件類型における利用者数はいずれも増加傾向にある。 令和2年12月末日時点の利用者数については、成年後見の割合が約75.2%、保佐の割合が約18.3%、補助の割合が約5.3%、任意後見の割合が約1.1%となっている。 出所:厚生労働省
成年後見制度の利用者数の推移(平成27年~令和2年) 成年後見制度の各事件類型における利用者数はいずれも増加傾向にある。
令和2年12月末日時点の利用者数については、成年後見の割合が約75.2%、保佐の割合が約18.3%、補助の割合が約5.3%、任意後見の割合が約1.1%となっている。
出所:厚生労働省

 

2012(平成24)年から2017年にかけて成年後見制度の利用者数は着実に増加傾向を示しています。申立人は、市区町村長が最も多く、全体の約23.9%を占め、次いで本人の子(約21.3%)、本人(約20.2%)の順となっています。

 

(注1) 後見開始,保佐開始,補助開始及び任意後見監督人選任事件の終局事件を対象としている。(注2) 「その他親族」とは,配偶者,親,子及び兄弟姉妹を除く,四親等内の親族をいう。 出所:厚生労働省
申立人と本人との関係別件数(令和2年) (注1)後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件の終局事件を対象としている。
(注2)「その他親族」とは、配偶者、親、子及び兄弟姉妹を除く、四親等内の親族をいう。
出所:厚生労働省

 

主な申し立ての動機としては「預貯金等の管理・解約」「身上監護」の順となっています。

 

(注) 後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件の終局事件を対象としている。 出所:厚生労働省
申立ての動機別件数(令和2年) (注) 後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件の終局事件を対象としている。
出所:厚生労働省

 

「同制度利用の可否については、提出された診断書や鑑定結果をもとに裁判所が判断しますが、現状では2〜4ヵ月程度を要します。所有財産の管理などで家族間の意見が対立している場合は、利害関係が生じない第三者(弁護士など)が後見人に選ばれるようになっています」(桝井弁護士)

借地に建てた賃貸物件が老朽化、建て直しは可能?

賃貸物件を借地に建設しているオーナーも少なくありません。

 

「最近は、借地の土地活用についてとくに相談が増えています。借地契約にはいろいろな条件があり、まずは地主(土地所有者)と調整が必要になりますが、老朽化した物件を建て替えようにも、地主が承諾しない、といったケースは珍しくありません。土地の返却を希望する地主から、法外な承諾料を要求されることもあります」(榎本氏)

 

「承諾してもらえなくても、あきらめる必要はありません。『借地非訟手続き』を進めるという手があります」(桝井弁護士)

 

 

これは、借地借家法に規定された借地非訟手続きという法的手段で、借地権者が、借地上の建物の建築・増改築に関わる求めを土地所有者に行い、承諾が得られない場合の手段です。借地権者がこの手続きを行うと、裁判所が双方の事情を考慮し、許可の可否を判断します。

 

「よほど特殊な建物を建てる計画でない限り、裁判所が許可する可能性は高いのです。しかし、だからといって安心はできません。金融機関から融資を受ける場合、地主から抵当権設定の承諾を得なければならないケースも多く存在します。現金で建築する場合は問題ありませんが、融資を受ける場合は注意が必要です。また、借地上の建物を、非堅固な建物から堅固な建物に建替える場合、借地条件変更の承諾料がかかります。これについても、地主とこじれないよう話を進めていくことが大切です」(桝井弁護士)

 

借地の建て替えに関するポイントや成功の秘訣は、セミナーで詳しく触れていきます。

「強気の家賃設定でも即満室」の物件を手に入れる

物件の設計や仕様、デザイン等も、長期的な展望で考えることが重要です。オーナーも入居者も安心できる堅牢な構造で、かつ、入居希望者が多く安定的な家賃収入が期待できる、そのような物件が求められます。榎本氏は、具体的な条件について解説します。

 

「入居者から選ばれ続け、先々まで安定収益を生み出せるのは、堅牢で自然災害にも強いのはもちろん、外観が美しく維持管理がしやすく、敷地や容積率を最大限に生かした高い収益性がある、そのような物件です。強さ、美しさ、住みやすさ、経済性を最大限追求するからこそ、長年にわたって満室が期待できる、魅力的な建物になるのです」(榎本氏)

 

一例として、名古屋地区の物件について紹介します。

 

「名古屋市内の人気エリアで、駅近というロケーションでしたが、築50年を経過して老朽化がひどく、ずっと空室状態だった物件の例です。相続税の節税も兼ねて3階建賃貸住宅に建て替えました。周辺にファミリー向けの駅近賃貸物件が少なかったため、全9戸で1LDK〜3LDKまで3タイプの間取りを提案しました。インテリアや間接照明にもこだわり、グレードに見合った高めの家賃設定としましたが、期待通りすぐに満室になりました」(榎本氏)

 

魅力的な物件の例をはじめ、収益面のメリット、その他、法律家の専門的な見地からの問題解決の提案等、セミナーでより具体的な内容をご紹介していきます。

 

 

パナソニック ホームズ株式会社
営業推進部 特建営業センター 所長
榎本 克彦

 

新麹町法律事務所
弁護士
桝井 眞二

 

 

パナソニック ホームズ株式会社 営業推進部 特建営業センター 所長

1985年、ナショナル住宅産業(現・パナソニック ホームズ)入社。

埼玉・鳥取・新潟・東京・千葉地区と、部門責任者を歴任。受賞歴多数。35年間にわたり、一貫して顧客の問題と向き合い、解決してきたことを何よりの強みとし、社内においては資産活用事業建築の第一人者との評価を得ている。

賃貸住宅や分譲住宅をはじめ、定期借地権分譲、複合施設、医療・介護施設、保育園、ホテル、多層階建築など、ほぼすべての分野の建造物の受注経験を持つ。

自らも複数の賃貸物件を保有し、賃貸運営の奥深さ、社会的意義とともに、オーナーとしての責任ややりがいも体感。その実体験をもとに行う親身なアドバイスにより、地主様・家主様から絶大な信頼を寄せられるほか、オーナー様・入居者様の立場に立った課題解決案・改善案の提案により、社内外から高い評価を得ている。

著者紹介

新麹町法律事務所 所長(共同経営者)
弁護士

大学4年在学中に司法試験合格。
昭和57年、東京弁護士会に弁護士登録。

現在は、新麹町法律事務所の所長(共同経営者)として、27名の弁護士を束ねる。
不動産関係、相続、一般民事、大型刑事事件等を手掛けている。

著者紹介

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