なぜこんなにも介護職の給与は安いのか?
日本が直面している高齢化問題。65歳以上の高齢者人口は、2021年9月15日現在推計で3640万人で過去最多を記録し、高齢化率は29.1%に達しています。その割合は今後も上昇し続け、国立社会保障・人口問題研究所の推計では2040年には、35.3%になるといわれています。
高齢者が増えるということは、それだけ介護が必要になる人が増えるということ。その問題から真正面から向き合う介護職は人材不足に悩まされています。それにも関わらず、なぜここまで給与は低いのでしょうか。
まず介護職は誰でもなれる仕事というイメージが先行しています。実際は、国家資格である介護福祉士など、さまざまな資格が存在します。しかし介護の現場では有資格者でも無資格者でも、業務は同じことが多く、「資格なんて意味がない」という声も。確かに無資格、未経験でも活躍できる場であることはプラスの面もありますが、給与の面では他業界と比べて安くなってしまうのが現状です。また介護報酬には上限があるため、自由に給与をあげることが難しいという事情も大きいようです。
ただ一度でも介護の経験があれば、「介護に特別なスキルがいらないなんてとんでもない」と感じるでしょう。たとえば、ベッドから車椅子への移動。力の入らない人はどれほど重く、大変なことか。介護、一つひとつが重労働であり、スキルがないとすぐに体を壊してしまうでしょう。さらに介護はサービスでもあるので、ホスピタリティも重要。「介護に特別なスキルがいらない」というのは幻想でしかありません。
もちろん、介護職の給与の低さは以前から議論されていて、給与は改善されつつあります。前述の『賃金構造基本統計調査』*によると、「介護支援専門職」の年収は380万7,500円から392万1,000円と103%の増加、「福祉施設介護員」は305万1,200円から345万7,000円と113%の増加、「ホームヘルパー」は286万3,900円から326万5,000円と114%の増加。確実に介護職の給与は増加しています。
*2020年から調査方式等変更になっているため、2012年から2019年度調査を比較。抽出職種は「介護支援専門員(ケアマネージャー)」「福祉施設介護員」「ホームヘルパー」の3職種
とはいえ、まだまだ他業種との給与格差は歴然です。そのようななか、岸田総理は介護職の賃上げに取り組む意向を表明。まずは公的価格の見直しを行うとしています。実際、どのように実現するのか、まだ不透明ではありますが、業務の過酷さに比べて、あまりに給与が安すぎる介護職の在り方が大きく変わるきっかけになるかもしれません。