東京五輪開催によってカレンダーに変更があったことを忘れ、「10月11日は祝日でなかった!」と焦った人は多くいたようです。そのようなドタバタ劇がありましたが、日本は世界的にも祝日の多い国として知られています。しかし休みが多いという感覚がないのは、なぜなのでしょうか。厚生労働省『令和2年賃金事情等総合調査』などから、日本の「有給休暇」の実態について見ていきます。
平均取得日数は10.1日…「有給休暇」取らざるを得ない実態の真相 (※写真はイメージです/PIXTA)

統計にみる…有給休暇は何日ある?何日取っている?

実際に、どれほどの有休が与えられているのか、厚生労働省『令和2年賃金事情等総合調査』で見ていきましょう。

 

まず労働時間の平均時間。所定労働時間(会社が定める労働時間)は、年間平均は1871時間27分、週間平均は38時間30分、1日平均では7時間43分です。産業別に見ていくと、最も年間労働時間が長いのは「飲食・娯楽」で2016時間、最も短いのが「商事」で1767時間23分。

 

また年間の休日日数は、平均122.9日。産業別に見ていくと、最も休日が多いのは「建設」で平均126.5日、一方で休日が少ないのは「運輸・交通」で平均108.4日です。

 

【産業別「年間所定労働時間」】

「飲食・娯楽」2016時間

「貨物運送」2004時間

「運輸・交通」2002時間

「百貨店・スーパー」1940時間30分

「私鉄・バス」1914時間44分

「建設」1884時間05分

「製造業」1875時間45分

「ガス」1872時間20分

「産業平均」1871時間27分

「鉱業」1857時間15分

「電力」1841時間40分

「海運・倉庫」1832時間15分

「新聞・放送」1800時間30分

「銀行・保険」1786時間12分

「商事」1767時間23分

 

【産業別「年間休日日数」】

「建設」126.5日

「電力」125.6日

「鉱業」124.8日

「商事」124.0日

「製造業」123.8日

「産業計」122.9日

「銀行・保険」122.8日

「ガス」122.7日

「私鉄・バス」119.4日

「新聞・放送」115.6日

「百貨店・スーパー」115.5日

「海運・倉庫」115.3日

「貨物運送」114.5日

「飲食・娯楽」113.5日

「運輸・交通」108.4日

 

出所:厚生労働省『令和2年賃金事情等総合調査』より

 

産業によって労働時間はまちまちですが、有休はどうでしょうか。勤続6ヵ月で付与される有休は平均13.3日。勤続1年では15.9日、1年半で16.3日、2年で16.9日、3年で17.7日、4年で18.6日、5年で19.6日、6年で20.2日、6年半で20.4日、10年で20.5日、20年で20.6日。勤続年数が3年あたりまでは法律で定められている休日数を大きく上回る休日を付与する傾向にあり、勤続6年以降は法定休日程度となっています。

 

産業別に「最高付与日数」を見ていくと、「新聞・放送」が最も多く26.0日。続いて「建設」が21.2日、「鉱業」が21.0日と続きますが、多くの産業で20日と、法定休日数通りの有休を認めている現状が見えてきました。

 

【産業別「最高付与日数」】

「新聞・放送」26.0

「建設」21.2

「鉱業」21.0

「海運・倉庫」20.7

「産業計」20.6

「製造業」20.6

「運輸・交通」20.4

「私鉄・バス」20.2

「銀行・保険」20.0

「貨物運送」20.0

「電力」20.0

「ガス」20.0

「百貨店・スーパー」20.0

「商事」20.0

「飲食・娯楽」20.0

 

出所:厚生労働省『令和2年賃金事情等総合調査』より

 

勤続6年以上であれば20日程度の有休が取れるのが一般的。しかし「日本は世界でも休まない国」として有名です。厚生労働省『令和2年就労条件総合調査』によると、2019年の有休取得率は56.3%と前年から3.9%の増加、平均取得日数は10.1日と前年から0.7日の増加となりました。政府は2020年に有休取得率70%以上を目指すとしていました。2020年、突如世界を襲った新型コロナウイルス感染症の影響がどれほどあるか明らかになっていませんが、到達は困難と見られています。

 

さまざまな視点から有休を見ていきましたが、意外にも平均で10日以上も有休を取得しているという現状が見えてきました。労働基準法の改正で「従業員の有休取得」が企業の義務となり、以前よりも有休を取りやすい(取らざるを得ない)環境になっているでしょう。

 

それでも「有休を取得している人」と「有休を取得しない人(取れない人)」の差は大きいのではないでしょうか。そもそも有休は「労働者の心身の疲労回復」「労働力の維持培養」「ゆとりある生活の実現」を目的とした、働く人たちの権利。仕事のパフォーマンスを上げるためにも、「休むとはいいにくい」と言い訳せず、有休を取得したいものです。