なかなか浮上の兆しが見えない日本経済。そのようななか、多くの人が将来の先行きを見通せなくなっていますが、なかでも「日本の50代は将来を悲観している割合が多い」という調査結果があります。なぜなのか、考えていきましょう。
もう明るい未来はない…将来を諦めた「日本の50代」が抱える悲壮感 (※写真はイメージです/PIXTA)

50代の3分の1はネガティブな未来を描いている

――自分の将来は暗い

 

博報堂生活総研『生活定点』調査の最新2020年の結果によると、20代から60代のうち50代が自分の将来に対して最も悲観しているという結果になりました。その割合は、37.6%。3人に1人以上はネガティブな未来像を描いています。

 

また男女別に見ていくと、「60代」を除き、男性のほうが「将来は暗い」と考える傾向にあります。

 

【年齢階級別「あなたの将来のイメージは暗い」と回答した割合】

 

「20代」31.7%(35.1%/28.2%)

「30代」29.4%(35.5%/23.1%)

「40代」35.9%(37.5%/34.4%)

「50代」46.1%(48.6%/43.4%)

「60代」43.8%(42.9%/44.7%)

 

出所:博報堂生活総研『生活定点』調査 2020年結果より

※(かっこ)内数値、左男性、右女性

 

50代はほかにも

 

──身の回りでよろこばしいことが少ない

──生活が楽しくない

──今後の自分の経済状態は苦しくなると思う

──世の中のことで気がかりなことや不安なことが多い

──世の中のことに夢や希望が少ない

──世の中のことで楽しいことが少ない

 

と、いずれの項目でも全年代平均を大きく上回ります。50代は、とにかくネガティブな世代だといえるでしょう。

なぜ日本の50代は明るい未来を描けないのか?

なぜ50代はここまで物事を悲観するのでしょうか。その理由のひとつは、50代が歩んできたキャリアにあると考えられます。

 

調査時、50代(51~59歳)だった人たちが生まれたのは、1963~1971年。そして大学を卒業して社会人1年目を迎えたのは、1986~1994年。50代後半であれば若い時にバブル景気を謳歌した世代。就職活動の際には、内々定者を囲い込むために海外に連れていき連絡を遮断させたなどと、信じられないようなことが行われていた時代です。しかし50代前半の人たちは、バブルが弾けて、就職氷河期を味わった人たち。正社員は諦めて、就職浪人、またはフリーターとして社会人をスタートさせた人も多かった時代です。

 

同じ50代とはいえ、前半と後半では社会人のスタートは大きく異なりますが、共通するのは、バブル景気を記憶していること、そして仕事に慣れ「さあこれから」という時には、戦後日本において、経験したことのない不景気に陥っていたということです。

 

当初は「あの良い時代に、いつか戻る」と踏ん張っていたかもしれません。しかしそのようなことは叶わず、30代では不良債権問題などで、潰れるはずがないといわれた銀行が次々と潰れていく姿を目の当たりにします。そして40代となった2000年代。2002年2月から2008年2月までの73ヵ月間続いた「いざなみ景気」では、なかなか好景気であることを実感できず、さらに規制改革で格差が拡大。就職氷河期で辛酸をなめた人たちを襲います。

 

50代後半の人たちが会社員となった1986年。当時の会社員の平均給与は362万6000円。その後、1989年には400万円を突破し、「毎年、給与は上がる」ことが当たり前だった時代を過ごしますが、1993年には戦後初めて会社員の給与は前年比マイナスを記録。その後4年に渡り前年比プラスを記録しますが、その後、前年比割れは当たり前に。そのような経験もあるからでしょう。50代は良い時を知っているからこそ、「あの頃は良かった」と昔を懐かしみ、「これから」を悲観する……そんな傾向が強くなったのかもしれません(関連記事:『戦後70年…会社員の平均年収の推移』)。