FXで含み損が出てしまった場合の対処法として、「ナンピン」と呼ばれる投資方法が知られています。含み損を減らして総合的なマイナスを減らすことができるとされていますが、ナンピンはリスクが高いとの指摘も。どのような取引方法なのか、そしてどのようなメリットやデメリットがあるのか、解説していきましょう。
江戸時代から使われていたナンピンとは?【プロFXトレーダーが解説】 ※画像はイメージです/PIXTA

ナンピンとは、どのような取引手法なのか?

ナンピンのメリットやリスクを語る前に、まずはナンピンがどのような取引手法なのかについて解説していきましょう。

 

ナンピンは漢字表記すると「難平」となります。「難を平らにする」という意味があり、投資の世界では「損が発生している状態から平ら(損を平均化する)」ことを指します。江戸時代にはすでに使われていた言葉ですが、近年ではFXや株式などの投資の世界で用いられることが多くなりました。

 

ナンピンを使用するのは「含み損が出ているとき限定」というのが特徴的です。

 

たとえば、1米ドル=100円の時に買いポジションを1万通貨分エントリーしたとします。

 

この状態で1米ドル=98円となると1万通貨あたりの含み損は2万円となりますが、この状態でさらに1万通貨の買いポジションをエントリーします。そうすると、含み損の総額は変動しませんが、「1米ドル=100円で1万通貨」と「1米ドル=98円で1万通貨」という状態になるので、平均値を算出すると「1米ドル=99円で2万通貨」ということになります。

 

そのため、1万通貨あたりの含み損は1万円となるので、相場が99円に戻った時に2万通貨すべてを決済するとプラスマイナスゼロの状態にすることが可能です。

 

本来ならば相場が100円に戻らないと含み損をなくすことができなかったのですが、ナンピンによって、99円まで相場が回復した時点で決済をすればゼロにすることができました。

 

このように、「損の平均化」によって1万通貨あたりのマイナスを減らすことができるのがナンピンの特徴となります。

ナンピンにはどのようなリスクがあるのか?

ナンピンはリスク管理ができる手法ともされています。しかし、使い方を間違えるとさらにマイナスを大きくしてしまう危険性があるので、ナンピンをしてリスク管理をする場合は、その先のトレンドまでをきちんと予測しなければいけません。

 

初心者にはナンピンを勧めることが難しく、素直に損切をしたほうが傷口を広げることも少ないのですが、初心者の場合はメンタル的に「損切をする」ということに耐えられない人が多いです(損切できないこと自体が状況をさらに悪化させてしまうことに繋がるのですが)。

 

では、ナンピンはどのようなリスクを抱えているのでしょうか。

 

ナンピンをしてリスク回避をするというのは、言い換えれば「ナンピンをしたあとに相場がある程度まで回復する」ということが前提の投資手法となっています。

 

上記の例に照らし合わせて紹介すると、1米ドル=100円の状態から98円へと相場が変動したために、98円の状態でナンピンを行い含み損の平均化を行いました。この後に99円まで相場が元に戻れば無事に含み損をなくすことができますが、逆に97円や96円まで相場が下がってしまった場合はどうでしょうか?

 

100円の状態で1万通貨の買いポジションを持っていた場合は96円まで下がってもマイナス4万円で済みます。しかし、98円の時点でナンピンをしたために、1万通貨あたりのエントリー金額を99円まで引き下げることができましたが、その後に96円まで相場が下がってしまうと今度は「2万通貨×3円分=6万円の含み損」という状態になってしまいます。

 

このように考えると、ナンピンをしたためにマイナスを大きくしてしまうことにも繋がります。これが「ナンピンをした場合のリスク」です。長期的に下落トレンドとなってしまった場合は、その期間の含み損を永遠に平均化し続けることをしなければいけません。

 

そうすると資金的にも精神的にも辛くなりますので、取引に慣れていない間はナンピンをしないで素直に損切をしたほうが良いということです。