グローバル人材を対象としたキャリアコンサルティングの仕事に携わる中山てつや氏の著書『なぜ職場では理不尽なことが起こるのか?』より一部を抜粋・再編集し、職場の人間関係にまつわる問題について解説する。
「会社員が出世できるか否かは上司次第」という哀しい現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

経営層が関与する「企業の不祥事」と「部下」の関係

相性の良し悪しは、組織の至るところで、様々なドラマを演出します。実際に、昨今世間を賑わせている、大企業の不祥事にも垣間見ることができます。

 

不祥事の内容は、粉飾決算や品質問題など多岐にわたりますが、いずれのケースにも共通しているのは、長期にわたって、隠ぺい工作が行われていたという点です。しかも、おそらくは何らかの形で、企業の経営層が関与していたということです。

 

組織の中で仕事をしている限り、部下として、表立って拒否するのは、経験上もかなり厳しい面があります。何とかやりくりしようとしますが、コンプライアンス上、問題があればあるほど、ハードルは高くなります。「上からの指示」と割り切って、突き進む者もいれば、躊躇して、一線を画す者も出るでしょう。

 

最終的には、出世や昇格、昇給のことを考慮し、どこかで妥協点を見出しながら、やむなく対応してしまうのが、組織人の常なのかもしれません。

 

経営する側から見ても、目標を達成しないと、自分の地位が危ういと感じた時は、ことが強行突破に及びます。更に、一度手を染めると、今度は発覚を恐れて、表に出ないよう、内部で画策することになります。そこで、側近として登用されるのが、間違っても裏切ることのない、「安心できる部下」です。

 

登用された相性の良い部下は、その後も、高い評価を得て出世するわけですから、ますます「忠誠を尽くす」ようになります。逆に、自分に歯向かい、立場を危うくする可能性のある部下は、もともと考えの合わない人種でもありますから、必然的に、重要なポストから遠ざけたり、排除したりすることになります。

企業の不祥事が後を絶たないのは一体何故なのか

株式を公開している上場企業では、不正や不祥事が起こらないように、様々な仕組みが設けられています。外部監査制度は、ファイナンス面で生じる弊害を未然に防ぐための、外部チェック機能として、ビルトインされています(最近は、機能しないケースも散見されますが)。

 

加えて昨今は、コーポレートガバナンスの強化が叫ばれ、内部統制の充実や、社外取締役制度の導入も進んでいます。にもかかわらず、「不祥事」が後を絶たずに起きてしまいます。

 

この現象は、単純に経営能力とか、管理体制の問題としてだけで、片づけるわけにはいきません。どうも、会社組織の奥深くで息づく、「相性の良し悪し」が影響していると思われます。場合によっては、「相性の良さ」が、不正の温床を招く可能性もあります。何といっても、「上に行けば行くほど好き嫌い」なのですから。

 

そう考えると、「相性」という「化学反応の副作用」は、実に壮絶かつ激烈である、と言わざるを得ません。