お子さんの長所を聞くと、たいてい「短所はたくさん思いつくんだけど…」と返ってきます。しかし、「欠点ばかりが目につくイライラ」が生む「短所口撃」は、子どもの才能をつぶしてしまうもの。長所を伸ばしてあげましょう。ここでは長所と短所について、教育評論家の石田勝紀氏が解説します。 ※本記事は、書籍『子どもの長所を伸ばす5つの習慣』(集英社)より一部を抜粋・再編集したものです。
「うちの子は、短所ばかり…」嘆く母親へ向けて教育評論家がズバリ ※画像はイメージです/PIXTA

「長所」⇒「短所」脳のスイッチの切り替え方

ここにコップがひとつあって、水が半分入っています。

 

このとき、「半分しか水がない」と見るか、「半分も水がある」と見るか? よく知られた「コップの水理論」は、経営学で使われることが多い考え方です。

 

事実はひとつで「コップに水が半分入っている」という状態があるだけですが、これについて、Aさんは「半分しかない」と考えるし、Bさんは「半分もある」と見るわけです(経営学の考え方にはここでは触れません)。

 

Aさん、Bさんのどちらがよい、という話ではありません。見る人の意識によって、同じ状態が反対の意味を持ちうる、というたとえ話です。

 

マイナス志向の人なら「水は半分しかない」とマイナスの側面を見るでしょうし、ポジティブな発想をする人には「半分もあるじゃないか」とプラスの側面が見えるでしょう。

 

実は、子どもの長所や短所についても同じことが言えます。短所と長所は、コインの表と裏と同様。どちらから見るかで、その意味も正反対に見えてきます。

 

講演会でこんなふうに「コップの水理論」の話をすると、

 

「そんなことはありません。うちの子は、ぜんぶ短所ばかりです」

 

と、嘆くお母さんが必ずおられます。こんなとき、私は決まってこう伝えます。

 

「それなら、思いつく短所を、ここにぜんぶ書き出してみてください」

 

こうして、ママたちが思いつくままに書き出した短所は、以下のようなものでした。

 

●飽きっぽい

●すぐにあきらめる

●臆病

●自分の意見がない

●神経質

●責任感がない

●生意気

●がんこで意地っ張り

●せっかち

●落ち着きがない

●反抗的

●不平不満ばかり言う

●その場しのぎ

●短気、感情の起伏が激しい

●とろい

●自分の自慢話ばかりする

●こだわりが強い

●心配性

●ひねくれてばかりいる

●おせっかい

●しつこい

●面倒くさがり

●優柔不断で何も決められない

●チクリ屋、すぐ言いつける

●ケチでがめつい

●八方美人、だれにでもいい顔をする……などなど。

 

たしかに書き出してみると、ぜんぶが悪いところに見えてきますね。

 

短所を長所に「変換」してみる

 

しかし、ここに書き出されたものは本当に短所でしょうか。

 

ここで魔法を使って…、これらを長所へと変換してみましょう!

 

●飽きっぽい→幅広い経験ができる

●すぐにあきらめる→見切りが早い

●臆病→慎重

●自分の意見がない→他人に合わせるのが上手

●神経質→細かいことによく気がつく

●責任感がない→ストレスがたまりにくい

●生意気→上下関係にこだわらない(ベンチャー向き)

●がんこで意地っ張り→意志が強い

●せっかち→やる気が充満している

●落ち着きがない→エネルギーがありあまっている

●反抗的→自己主張ができる

●不平不満ばかり言う→評論家としての資質がある

●その場しのぎ→臨機応変の対応ができる

●短気、感情の起伏が激しい→素直に感情表現ができる

●とろい→自分のペースを大切にできる

●自分の自慢話ばかりする→自己肯定感を自分で上げることができる

●こだわりが強い→好きなことを伸ばす能力を備えている

●心配性→先を見通す力がある

●ひねくれてばかりいる→人と同じであろうとしないオンリーワンの素質

●おせっかい→よく気がつく、世話することが得意

●しつこい→あきらめない精神を持っている

●面倒くさがり→合理主義

●優柔不断で何も決められない→心がやさしい、平和主義

●チクる、すぐ言いつける→しっかり者

●ケチでがめつい→金銭管理がきちんとできる

●八方美人、だれにでもいい顔をする→器用に取りつくろう力がある

 

はい。もちろん、これは魔法でも何でもありません(笑)。

 

しかし、どうでしょうか。こんなふうに脳のスイッチにいつもと違う角度で触ってみるだけで、短所にしか見えなかった欠点が、見事なまでに「褒めてあげたくなる個性」に変身してしまうのですから、面白いじゃないですか!

 

こんなふうにでんぐり返しみたいな発想ができると思えば、もう短所ばかりだと嘆く必要はありません。ただし、短所がすべて長所に変換可能なのか?といえばそうでない事例もあります。

 

ここでママたちに伝えたいのは、子どもは今のままでも大丈夫ですよ、そんなに心配しなくても問題ないですよ、ということです。