「いい子」が自主性を持てるまで、長い時間がかかるワケ
この学校を続けるうちに、いわゆる「いい子」が自主性を持った子どもになるには、より長い時間と困難なプロセスが必要であることが分かりました。
「一般に『悪い子』と呼ばれる子は、学校側の価値観を受け入れていない子です。そのため反抗心や疑念から自分や他人を困らせるのですが、種子学苑に来た後は、新しい価値観を築くだけで済みます。ところが『いい子』は、従来の価値観に完全に縛られています。今あるものを壊してから、新しい価値観を再構築するというプロセスは、当然多くの時間と労力が必要です」。
これまで多くの子どもを見てきたベテラン教育者はこう語ります。
授業や日常生活の中で、「いい子」はいつも先生が「正しい答え」や方法を与えてくれるのを待っています。先生がそれを与えてくれないと分かると、一体何をしたらいいのか、途方に暮れてしまいます。
「いい子」たちは、決まった答えがない問題や、テーマのないエッセイが苦手です。いつかどこかで間違いを犯すのではないかと不安になるからです。
心の中に言い知れぬ恐怖があり、常に他人から肯定され、称賛を受けない限り、自分の出来は不充分だと感じます。他者の成功を受け入れるのも苦手で、自分以外の人が褒められると、すぐに「じゃあ自分はダメなんだ」と解釈してしまいます。
実際のところ、発言した人に比較する意図は全くありません。このような「いい子」には、本当に心が痛み、同情を感じます。
ある日、このことを学苑の「ベテラン生徒」と話し合ったところ、中でもはっきりと意見を言う生徒がこう言いました。「機会があれば、一般校に通う全ての子どもに、『嫌な感じがして、理由もよく分からない要求に従うのは、魂を売り渡す行為なんだよ』と伝えなければいけないと思います」
私も「大人の言うままに自分の魂を売り渡せばいい」なんて二度と子どもに思わせないでほしいと、全ての大人に対して、心から願います。
李 雅卿(リー・ヤーチン)
種子学苑 創立者