オードリー・タンの母、李雅卿氏が創設した学校「種子学苑」。子どもたちは、何を学び、いつ休むかを自分で決める自主学習を行います。ここでは、「いい子」という言葉に疑問を持った生徒の文章から、同氏が「いい子」「悪い子」について解説していきます。 ※本連載は書籍『子どもを伸ばす接し方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・編集したものです。
「子どもはいい子であるべきだ」と育てられた大人たちの悲しい末路 ※画像はイメージです/PIXTA

「いい子」が自主性を持てるまで、長い時間がかかるワケ

この学校を続けるうちに、いわゆる「いい子」が自主性を持った子どもになるには、より長い時間と困難なプロセスが必要であることが分かりました。

 

「一般に『悪い子』と呼ばれる子は、学校側の価値観を受け入れていない子です。そのため反抗心や疑念から自分や他人を困らせるのですが、種子学苑に来た後は、新しい価値観を築くだけで済みます。ところが『いい子』は、従来の価値観に完全に縛られています。今あるものを壊してから、新しい価値観を再構築するというプロセスは、当然多くの時間と労力が必要です」。

 

これまで多くの子どもを見てきたベテラン教育者はこう語ります。

 

授業や日常生活の中で、「いい子」はいつも先生が「正しい答え」や方法を与えてくれるのを待っています。先生がそれを与えてくれないと分かると、一体何をしたらいいのか、途方に暮れてしまいます

 

「いい子」たちは、決まった答えがない問題や、テーマのないエッセイが苦手です。いつかどこかで間違いを犯すのではないかと不安になるからです。

 

子育てと学校作りに格闘した教育者が自らも悩んだ数々の質問に答えます!

心の中に言い知れぬ恐怖があり、常に他人から肯定され、称賛を受けない限り、自分の出来は不充分だと感じます。他者の成功を受け入れるのも苦手で、自分以外の人が褒められると、すぐに「じゃあ自分はダメなんだ」と解釈してしまいます。

 

実際のところ、発言した人に比較する意図は全くありません。このような「いい子」には、本当に心が痛み、同情を感じます。

 

ある日、このことを学苑の「ベテラン生徒」と話し合ったところ、中でもはっきりと意見を言う生徒がこう言いました。「機会があれば、一般校に通う全ての子どもに、『嫌な感じがして、理由もよく分からない要求に従うのは、魂を売り渡す行為なんだよ』と伝えなければいけないと思います」

 

私も「大人の言うままに自分の魂を売り渡せばいい」なんて二度と子どもに思わせないでほしいと、全ての大人に対して、心から願います。

 

 

李 雅卿(リー・ヤーチン)

種子学苑 創立者