近年、活発に行われている駅前の再開発。何ができるかとワクワクしていると、商業施設とタワーマンションが一緒になった複合施設が誕生……というのは、最近のお決まりのパターンになっています。「住むには文句なし」といった印象を受けがちなタワマンですが、人が生活する以上、実際の暮らしにはやはりトラブルも起こります。そこで本記事では、外部の人間が知り得ない「タワマンの実情」を住民への取材で明らかにしていきます。北海道在住の60代夫婦を襲った悲劇とは?
終の棲家に「タワマン」を買う金持ち高齢者が直面する、悲惨な事態 ※画像はイメージです/PIXTA

戸建てを処分してマンションを購入する高齢者は多いが

地震から3年あまり。タワマン生活もすっかり慣れて、快適な毎日をおくっているという老夫婦。ただこの先、同じようなことがあったなら……いまよりも年をとっているだろうし、さすがに対応できないかもと不安を口にしています。

 

この老夫婦のように、一戸建ての維持・管理の難しさを理由に、マンションなどの集合住宅に住み替えるケースは珍しくありません。

 

国土交通省『令和2年度住宅市場動向調査』によると、新築マンション購入者のうち、「一戸建て(持ち家)からの住み替え」と答えたのは19.1%。さらにその51.9%が「持ち家を売却した」と回答しています。ちなみに住み替え前の一戸建ては、平均3103万円で売却できたといいます。

 

60歳以上でマンションを購入したというのは、1次取得者で5.7%、2次取得者で48.2%。そして購入資金は1次取得者で平均4180万円、2次取得者で平均5448万円。

 

単純計算すると、住み替え前の住宅の売却益3000万円に2500万円ほどを足してマンションへと住み替えをしている……そんな平均像が見えてきました。

 

そもそも60代で住宅ローンを利用することは可能なのでしょうか。結論からいうと、多くの金融期間で、借入時年齢の上限を70歳としているので、60代でも問題はありません。しかし審査を通過しなければならず、希望通りの融資額が認められるかといえば、話は別です。

 

前出の調査で「減額融資」となったのが10.6%、「融資を一切断られた」が3.1%。7~8人に1人の割合で、「希望通りにはいかなかった」と回答しています。またその理由としては「年収」(38.1%)「勤続年数」(19.0%)など、現役世代の理由と思われるものが上位を占めていますが、高齢者の理由として多いと思われる「年齢」が9.5%。住宅ローンで希望が通らなかった10人に1人の割合です。

 

仮に65歳で住宅ローンを組んだとしましょう。その先、男性であれば平均20.05年、女性であれば平均24.91年の生活を考えなければいけません。年金生活がスタートしたのと同時にのしかかる、住宅ローンの返済……豊かな老後とはかけ離れた世界です(関連記事:『【2021年】平均余命早見表…あと何年生きられるのか?』)。

 

このような厳しい現状から考えると、高齢者の住み替えであれば、既存の住宅の売却益と、無理のない範囲での貯蓄の切り崩しの範囲内で予算を決めるのが現実的、といえそうです。

 

ちなみに前出の高齢者夫婦の場合、マンションの購入費は戸建ての売却益と貯蓄のみ。住宅ローンは利用しなかったそうです。

 

――大病の経験もあって、ローンは期待できない、という事情もありました。「いつかは住み替え」ということを念頭に、若い時からコツコツと貯蓄をしてきたので、購入費用に不安はなかったです。タワマンであんな事態に見舞われるとは思ってもなかったですけど。

 

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※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。