一生の一度の住宅購入の際し、多くの人は住宅ローンを利用します。無理のない返済プランを立てて借入をするものですが、必ずしも上手くいくとは限りません。そこで本記事では、実際にローンを借りた人じゃないと分からない「思わぬトラブル」を、住宅購入者への取材で明らかにしていきます。43歳、会社員がローン破綻寸前に追い込まれた理由とは?
住宅ローン返済「甘い見通し」で家買う夫婦が直面する、悲惨な事態 ※画像はイメージです/PIXTA

夫婦で正社員…月々の返済に負担はないからと、頭金なしでマンションを購入

東京都心から電車で30分ほど。駅から徒歩5分ほどの新築マンションを購入した43歳の会社員、Aさん。家族は、妻と小学生の子どもが2人の4人家族。マンションの1階の4LDKだけど、その代わり専用の庭がある、という造りが気に入っています。

 

購入の決め手は、巨大ショッピングモールからも近く、生活利便性が高かったこと、現在の勤務地まで30分ほどという交通の利便性も申し分なかったこと、そして実家からも車で30分圏内と近く、子育てをするうえでも便利だったことの3点でした。

 

――購入したのは、ちょうど上の子が生まれたときだから、10年ほど前。頭金はほとんど入れずに購入しました。夫婦共働きで、月々の返済は1人あたり10万円未満だから、大丈夫だろうと考えたんです。

 

頭金をどれくらいいれるかどうかは、人それぞれ。頭金を多く払えば、その分、月々の返済額は下がりますが、預貯金が少なくなれば、万が一のときに対応できなくなります。一方、頭金を少なくして手元に預貯金を残しておく、というのもひとつの考え方。しかしその場合、月々の返済額は大きくなってしまいます。どちらも一長一短といえるでしょう。

 

国土交通省『令和2年度住宅市場動向調査』によると、新築マンションの購入者(一次取得)の平均年齢(世帯主)は、39.38歳。平均値よりは早い購入でした。

 

また平均世帯年収は798万円、平均購入金額は4639万円で、そのうちローンは3050万円。平均返済負担率は18.2%、平均返済期間は31.5年でした。

 

Aさんが購入したマンションの価格は約5200万円。仮にすべてをローンしたとして返済プランを考えてみましょう。返済方式は元利均等、当初5年間の金利は0.5%、以降は1.0%、30年返済でシミュレーションしていくと、総返済額は5892万9906円。5年目までは、月々15万5578円、6年目以降は月々16万5317円の返済となります。

 

一人当たり月々8万円強の返済。住宅ローンの借入金額の上限は、年収400万円以下であれば、返済負担率は30%、年収400万円以上であれば35%といわれています。Aさんの場合、年間返済額は約200万円ですから、単純計算、年収580万円程度あれば全額の借入が可能だということができます。

 

もちろん、住宅ローンの審査は年収だけで判断されるわけではありません。年収350万円以上であれば5200万円満額のローンが下りるというわけではないことは、心得ておく必要があります。