関西の最難関中入試は、算数が左右する
関東と関西の中学入試の違いをお話しするとき、私がよく例に挙げるのが「算数オリンピック大会」です。
算数オリンピックはフィールズ賞を受賞した数学者・広中平祐先生によって提唱され、1992年から毎年開催されています。学習の進度や受験の目安をはかるためのテストではなく、小・中学生の才能発現の場となることを目的に、国境・言語・人種の壁を越えて、地球上すべての子どもたちが算数という万国共通の種目で「思考力と独創性」を競い合う大会です。
小5生以下は「ジュニア算数オリンピック大会」か「算数オリンピック大会」のいずれかを選択でき、小6生になると「算数オリンピック大会」に参加することになります。また、小1生〜小3生を対象とした「キッズBEE大会」もあります。
その結果を見ると、小5生までは参加人数の差もありますが予選通過者数や入賞者数は圧倒的に関東勢が多い。ところが、小6生だけは、ぐっと関西の子どもたちが増え、金メダルや銀メダル、銅メダルをとります。
ここに、関東と関西の最難関中入試の違いが現れています。
関東の入試は、算数・国語・理科・社会の4科目が主流で「総合力」が勝負になります。一方、関西は、最難関中の灘中を筆頭に、算数・国語・理科の3科目入試、あるいは3科目・4科目の選択入試が大半で、なかでも灘中の算数は2日間の試験を通して、比較的子どもたちが点をとりやすい計算問題は1問だけ。
200点満点中わずかの配点しかなく、残りは思考力を問う難問が並びます。つまり、「算数」の得手・不得手によって大きく点差が離れてしまう問題構成なのです。算数が極端に難しいがゆえに、その点差がほかの試験科目である国語・理科の穴を埋めて逆転合格するケースも珍しくありません。
これが関西の入試の特徴ですが、実際に灘中の算数は京大生や阪大生でも苦戦するほど難解です。
そのため、関西の受験塾は算数のプログラムを強化し、小6生になるとかなりの時間を算数の指導に費やします。一方、関東では4科目をまんべんなく底上げしなくてはならないため、特に小6生になってからは社会のフォローが重要視されます。
算数オリンピックで小6生だけ関西勢が浮上するのは、その時期、関西の中学受験生たちが算数という教科に集中して取り組んでいる証なのです。
橋本 憲一
浜学園
学園長