算数オリンピックの予選通過者数や入賞者数は、小学5年生まで圧倒的に関東勢が多い一方、小学6年生になると関西勢が一気に増えるそうです。その理由はどこにあるのか…灘中合格者数16年連続1位を誇る塾浜学園の塾長である橋本憲一氏が解説します。※本連載は橋本憲一氏の著書『灘中に合格する子は学力のほかに何を持っているのか: ワンランク上の志望校に受かるための能力と習慣』(ポプラ社)より、一部を抜粋・再編集したものです。
算数オリンピックで「小学6年生だけ」関西勢が突出して強いワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

灘中受験…最難関の算数で「8~9割正解できる子」の特徴

ところが、灘中の算数は、とても難しいのです。

 

1日目の算数1は60分間で15〜20問ぐらいの解答欄を素早く正確に埋めていき、2日目の算数2は同じ60分で5問を解きます。今度はじっくり解き方を見る大問になっているというわけです。

 

この2日間にわたる算数が桁外れに難しく、2019年度の「算数1」の受験者平均点は38.5点(100点)で合格者平均点は49.8点(100点)。「算数2」の受験者平均点は44.5点(100点)で合格者平均点は56.8点(100点)です。

 

算数合計では受験者平均点は83.0点(200点)、合格者平均点は106.6点(200点)となっていますから、合格者のレベルのなかで真ん中あたりにいる子どもでも、5割程しかとれないレベルの、超難問ということです。

 

しかしその状況でも、算数が突出している子は8〜9割正解します。算数の合計平均点が200点満点中100点あるかないかですから、算数で170〜200点をとったら国語・理科が多少悪くても補えてしまう。そのぐらい灘中の算数は合否への影響が大きいのです

 

灘中の試験形式の場合、算数の上げ幅分で合格するタイプの子どもが半数近くいると思いますが、この突出して算数に強い彼らは計算や文章題だけでなく、普通の子どもならば解答に10分以上かかるような図形のややこしい問題でも2〜3分で解いてしまいます。

 

もちろん前提には数多くの勉強の積み重ねがあるのですが、彼らは共通して、算数に対して「勉強」という垣根を超えた「ゲーム感覚」を持っています。

 

問題を前に必死になって考えること、最短で答えを導きだすこと、その発見が楽しくてたまらないというタイプなのです。そのひらめき力には私たち講師も驚かされます。

 

通常10分かかる算数の問題を2〜3分で解けるということは、点数のみならず時間も得ることになります。余りの時間をほかの難しい問題に使うことができますし、制限時間のある入試という舞台ではそれも大きなメリットです。

 

算数の点差で入試がかなり決まる。これが灘中の受験です。浜学園では夏休みになると全体の勉強時間の7割以上を算数に費やしますが、これを東京の「駿台・浜学園」(東京に4ヵ所、神奈川に2ヵ所ある、駿台と浜学園が連携した難関中学受験塾)の説明会でお話しするととても驚かれます。

 

関東は4科目が主流ですから「算数ができる子は算数をしなくていい。その分、社会をやってください」と指導されることが多いようです。目標校の試験科目によって勉強の時間配分は異なりますが、灘中受験に算数のブラッシュアップは不可欠です。

 

そこを通過した子どもたちがやがて灘中から灘高に進み、理系最高峰と言われる東大理Ⅲや京大医学部に現役合格しているのです。