算数オリンピックの予選通過者数や入賞者数は、小学5年生まで圧倒的に関東勢が多い一方、小学6年生になると関西勢が一気に増えるそうです。その理由はどこにあるのか…灘中合格者数16年連続1位を誇る塾浜学園の塾長である橋本憲一氏が解説します。※本連載は橋本憲一氏の著書『灘中に合格する子は学力のほかに何を持っているのか: ワンランク上の志望校に受かるための能力と習慣』(ポプラ社)より、一部を抜粋・再編集したものです。
算数オリンピックで「小学6年生だけ」関西勢が突出して強いワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

灘中受験の最大の特徴は、自分で「考える力」

算数でトップ集団に入る子どもは、受験に強いです。国語・理科・社会は試験問題のなかに選択肢があったりもしますが、算数という教科だけは、しっかりと理解していないと正答できませんし、理解していても計算間違いをすると「○」になりません。

 

その結果、国語・理科・社会というのは平均に対して正規分布の幅が狭いのですが、算数は個人差が大きく、平均に対する分布の幅も広くなります。そのため、算数で頭抜けると国語や理科の失点を補うこともできます。

 

灘中の入学試験は例年1月中旬に行われますが、試験科目は算数(200点)・国語(200点)・理科(100点)の3科目です。

 

1日目に算数1・国語1・理科、2日目に算数2・国語2と、算数と国語については、形式の違う試験を2日間にわたって受けることになります。

 

関東の学校では最難関中の開成中をはじめ、「社会」を加えた4科目で総合的な能力を判断する入試が主流ですが、灘中には社会がありません。

 

その理由を学校側に尋ねたことがありますが、「暗記からスタートする社会という教科は『考えるレベル』になるまでには時間がかかる」との回答でした。

 

他教科は短期間でも「考える算数」、「考える国語」、「考える理科」の力を見ることができますが、小学生の社会の範囲ではたしかに難しい。

 

これは灘中受験の大きな特徴で、最難関と言われる灘中が受験生に問うのは、自分で「考える力」だということです。

 

その特徴は国語の出題にも現れています。灘中の1日目の国語1は俳句やことわざ、慣用句など知識分野と語句がメインですが、知恵を使う漢字パズルやしりとりをして語句をつなげるなど、パズル系の問題が多いと言われています。

 

2日目の国語2は詩の出題が特徴的で、内容を深いところまで読みとり、自分の言葉で説明することが求められていますが、一般的な入試国語に比べて灘中では心情を読みとる部分の配点がそこまで大きくないため、情緒的な国語が苦手な子どもでも、算数・理科でしっかり点をとることができれば、かなり合格に近づきます。