コロナ禍、これまで以上にネットを介したコミュニケーションが増えています。しかし、ネット上でのやり取りは、リアルの対話とは異なる心理になりやすく、そこを自覚していないと、相手との距離感を見誤ることになります。心理学の専門家である目白大学名誉教授、渋谷昌三氏が解説します。※本記事は『相手の心が9割わかる 大人のブラック心理学』(日本文芸社)より一部を抜粋・再編集したものです。
【心理学者が解説】オンラインで「コミュニケーション弱者」になりやすい人・なりにくい人 ※画像はイメージです/PIXTA

ネットでの誹謗中傷がエスカレートしやすいワケ

●「自分は安全な場所にいる」と思うからこそ…

 

ネット上の誹謗(ひぼう)中傷は、今や深刻な社会問題です。それによって命を絶つ人も増えており、人々に与える影響も大きくなっています。ネット上のことなのだから気にしなければいい。そんなふうに思えるのは、自分に火の粉がふりかかっていないからです。自分がそんな目にあったら、どんなにストレスや恐怖を感じることか。

 

嫌いな相手に面と向かって「お前なんか嫌いだ」と言う人がいるでしょうか? 少なくとも会社や大人の集団の中では、そういうことはほぼないと思います。なぜなら、そんなことをすれば自分と相手だけでなく、その周囲の人間関係までおかしくなるし、だいたい、それを伝えたからといって意味がありません。

 

それなのに、ネット上になると、特定の人に対して罵詈(ばり)雑言をぶつけたり、脅迫的なメッセージを送ったりする。そこではネットの匿名性が大きな要因になっています。アメリカの心理学者、ジンバルドの実験によると、没個性化、つまり匿名の状況下において、人は冷酷になりやすく、相手をくり返し攻撃することで、さらに冷酷さを増していくという結果が出ています。もしもネット上のメッセージのすべてが、メッセージの内容と同じく、誰が書いたのかまで確実に世界中にさらされてしまうとしたら、直接関係ない相手に悪意のあるメッセージを送る人はいないでしょう。自分も痛みを伴うからです。

 

ネット上で嫌なことをされれば辛いということを意識したうえで、自分は安全だからこそ、実際にはできないような卑劣な行動をしているのです。

 

また、数の論理も作用します。大勢が一斉に攻撃することにより、自分の影響力は大多数の中の一人として小さく感じられ、罪の意識が生まれにくいのです

 

【なぜネットでは人は凶暴になるのか】

 

 

人は集団の中に入り自分の個性がなくなり、自分の匿名性や安全性が守られると、急に凶暴化して攻撃的になる。対面なら相手の表情が見えて、攻撃性も弱まるが、ネット上ならそれがないので、より攻撃が悪化する。

 

 

SNSで著名人とつながっていると、リアルな知り合いではないのに、身近な人と勘違いしてしまう。そのため、その著名人が意に反したことをすると、裏切られたと苛立って誹謗中傷をしてしまう。「かわいさ余って憎さ百倍」である。

 

◆大人のブラック心理テク◆

没個性化で人はネット上で普段できないことをする