いまやリモート会議は当たり前のものになりましたが、それでも苦手意識を持つ方は少なくありません。オンラインであっても場の主導権を握るためのテクニックを、心理学の専門家である目白大学名誉教授、渋谷昌三氏が解説します。※本記事は『相手の心が9割わかる 大人のブラック心理学』(日本文芸社)より一部を抜粋・再編集したものです。
リモート会議で相手の心を翻弄して主導権を握る「視線操作」の極意 ※画像はイメージです/PIXTA

「目線の動き」を見れば、相手の本音がわかる

●目は「見せる」ものでもある

 

オンラインでは相手の気持ちが汲み取りにくいと感じる人が多いでしょう。相手の映像が映っているとはいえ、直接会っているのと比べると、画面越しではノンバーバル(非言語)コミュニケーションのための情報が薄まるのも事実です。すると、つい情報を得る要素を探してしまいがちになり、余計にどうしたらいいのかわからなくなってしまう……。

 

そんな時は迷わず相手の目に注目しましょう。「目は心の窓」という言葉は真実なのです。人の心の中は目に表れるのです

 

全体的なことでいえば、目の動きが激しい場合、その人は今の状態に集中していないといえます。落ち着いた気持ちでこちらの話を聞いてくれている相手の目は、キョロキョロ動いたりしません。1点をじっと見つめるというのではなくても、落ち着いた静かな動きであるはずです。また、不安があったり、頭の中でいろいろな考えが行き交っていたりする時などは、黒目があちこちに動きがちです。

 

相手がそのような状態の時は、自分が視線を1点に定めて、「ここまでは大丈夫ですか?」などと声がけをしてみるのもいいでしょう。無意識にキョロキョロしているのであれば、自分自身の落ち着かない状態を自覚し、集中してくれるかもしれません。何か言いたいこと、心配なことなどがあって視線が泳いでいるのであれば、それを切り出す機会を与えられます。いずれにしても、こちらが相手の状態に気付いていることを知らせることにより、相手に対して注意喚起できます。

 

●気持ちを伝えるテクニックにも

 

目の動きが発するサインの例をいくつかあげてみましょう(左利きの人の場合、左右が反対に出ることがあります)。

 

視線が右下の時。肉体的な痛みなど、自分の身体に関わることを考えています。左下の場合、音楽など聴覚に関わるイメージです。想像上の光景などを思い描こうとしている時は視線が右上に行きがちです。それを活用すると、右上を見ることで考え深い人間だという印象を与えることができます。過去の体験や見たことのあるものを思い出そうとする時は視線が左上に行きます。視線を右や左にそらすのは同意していない時。または相手に好意を持てない時。視線を下にそらすのは相手を恐れている時です。上目づかいは相手にへりくだっていたり、甘えたかったりする気持ちの表れ。見おろすのは、そのまま相手を見下していることになります。

 

人は五感を通して周囲を認識しているので、相手に質問した時に相手の視線がどの方向に向くかで思考パターンを読み解くことができる。それがアイ・アクセシング・キュー理論(脳の取り扱い説明書と呼ばれるNLPテクニックの1 つ)。
[図表1]人の本音は目の動きでわかる 人は五感を通して周囲を認識しているので、相手に質問した時に相手の視線がどの方向に向くかで思考パターンを読み解くことができる。それがアイ・アクセシング・キュー理論(脳の取り扱い説明書と呼ばれるNLPテクニックの1 つ)。

 

これらの事実を知らなくても、視線は気持ちを伝えるもの。つまり、相手の気持ちを読み取ると同時に、自分の気持ちを伝えるために視線を使うこともできます。

 

◆大人のブラック心理テク◆

心の窓で「見る」「見せる」をコントロール