オードリー・タンの母、李雅卿氏が創設した学校「種子学苑」。子どもたちは、何を学び、いつ休むかを自分で決め、「ほんとうに学びたいこと」を探すのですが…。 ※本連載は書籍『子どもを伸ばす接し方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・編集したものです。種子学苑に集う子どもや親、先生から寄せられた質問に、同氏が一つ一つ答えていきます。
台湾・天才IT相の母が語る「宿題をしない子ども」への注意の仕方 ※画像はイメージです/PIXTA

「宿題が終わらなかったら…」どう伝えるのが正解?

他者主導型学習では、親や教師などの大人が子どもの人生に起きうる危機や困難を全て予想し、それに向けて準備できるよう子どもを手助けします。子どもが大人の望んだ結果を出せそうにない時は、先回りして行動を制限します。

 

例えば、「宿題が終わらなかったら、寝てはいけません」「ご飯を食べなかったら、遊んではいけません」という具合に。ここでは、大人が自分または社会の価値観に従って、宿題は睡眠よりも、食事は遊びよりも重要だと判断しています。

 

子どもを大人が望むとおりに行動させようとするのは、それが子どもにとっていいことだと信じているから。でも、子どもが楽な方へと流れることも心配です。そのため、大人はご褒美や罰則といった強い圧力の必要性を感じます。

 

一方、自主学習では、まだ起こっていない遠い未来の危機や困難を予想することは滅多にありません。

 

親や教師は、今まさに子どもが直面している大小様々な困難にのみ注目し、今の子どもにできる方法で対処するよう励まし、自然に生まれた結果をもとに指導します。

 

例えば、「宿題が終わらなければ、自分で先生にそう伝えないといけないよ」「今ご飯を食べなければ、次の食事まで何も食べられないよ」と伝えます。宿題と睡眠、食事と遊びのどちらがより重要か、子どもの代わりに大人が判断することはありません。大人が用意するのは、子どもが落ち着いて宿題ができる時間と、安全に眠り、ご飯を食べ、遊ぶための場所だけです。

 

子どもは必ず楽な方へ流されるとも、必ず一生懸命に努力するとも決めつけず、子どもは今いる場所で、今できることをするものだ、と考えるのが自主学習です。親や教師自身も、自然でまっさらな心の状態で子どもに接しなければいけません。

 

子どもを放っておくのではなく、ただ子どもを信じ、大人は大人の役割を果たしながら、子どものことは子どもがやるべきだと考えるのです。

 

子どもは一つ一つ選択し、経験してこそ、自ら進んで努力しようと思う目標を見つけられます。こうして人と協力する能力や、事務作業をこなす能力を身につけ、さらに心から誰かを大切に思い、尊敬できるようになるはずです。

 

大人がするべきこと、子どもがするべきことの内容は、大人と子どもで話し合って、両方が納得できる答えを見つければいいでしょう。