オードリー・タンの母、李雅卿氏が創設した学校「種子学苑」。子どもたちは、何を学び、いつ休むかを自分で決め、「ほんとうに学びたいこと」を探すのですが…。 ※本連載は書籍『子どもを伸ばす接し方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・編集したものです。種子学苑に集う子どもや親、先生から寄せられた質問に、同氏が一つ一つ答えていきます。
台湾・天才IT相の母が語る「宿題をしない子ども」への注意の仕方 ※画像はイメージです/PIXTA

「どんな教育をするべきか?」心配しすぎると大きな損失に

* * * * *
Q.「ほんとうに学びたいこと」を探すのは、簡単ではありません。子どもにとっては無駄な時間になるだけではないでしょうか。まずは、教科書通りに学ぶことのほうが大事だと思います。
* * * * *

 

昨日、図書館で長いことお話しした時、私にはあなたの心配や不安が伝わってきました。家に帰って少し考えた後、自主学習と他者主導型学習(親や教師がリードして内容を決める学習)の違いをお話しするため、あなたに手紙を書くべきだと思いました。

 

現代の親は自分の子どもに対し、自立心、コミュニケーション能力、責任感、自己管理能力、物事への探求心などを持ってほしいと思うものです。しかし、これは教育によって叶えられる「目標」であり、教育の方法ではありません。

 

ではどんな教育をするべきか? この疑問に対する向き合い方は、人生や命に対する考え方によって違います。

 

あなたは人の命を道具のように扱う人ではないので、「老後に備えて子どもを育てよ」という古い考えを押し付けたり、現代の様々な集団主義者のように、自分や他人の子どもに非現実的で崇高な生きる目的(国の名誉や家族の面目)を求めたりはしませんよね。

 

でもあなたは子どもの将来を心配するあまり、もし不真面目に育ち、生計を立てられなくなったら? 意志が弱く、分別のない人間になったら? 競争に敗れて、路頭に迷ったら? などと考え、まだ自分の目が届く小さい(あなたが間に合うと思える)うちに子どもを教育して、意志の強さ、判断力、親しみやすさ、協調性、さらには仕事につながる一つ以上のスキルを身につけさせようとしています。

 

あなたは「こんな風に考えるのは正しくないと言うんですか? 母親として、心配せずにいられますか?」と言っていましたね。

 

心配することが正しくないと言いたいわけではないのです。でも心配すればするほど、事態は深刻になるでしょう。なぜなら、自主学習と他者主導型学習の違いは、まさに「この心配とどう向き合うか」にあらわれるからです。