たとえば、ミスミ時代の失敗はこんなふうに考えることができたら回避できたはずだ。
「看護師だけで金属加工業に参入してくる会社があったら、どうだろう。僕らは、間違いなく、『無謀だ』と笑ったと思う。金属加工の業界はそんなに甘くない。事業が的を射ていない手法であったならなおさらだ」
「『ミスミ病院』を作ることに挑戦しようとしていたなら、さすがに医者を雇っただろう。そこまでわかりやすければ自社の人間だけで参入しなかったはずだが、そこまでわかりやすくなかったので、僕たちは自社の人間だけで参入した」
つまり、立場を変えて考える。極端にして考えてみる。それができれば、落とし穴に気づけたはずだ。
心から反省をしているからこそ、あなたには同じ過ちを犯してほしくはない。後日談として、僕は、3回目のピボットで、動物病院向けの業務用カタログ通販事業として、ようやく事業を軌道に乗せることができた。
全国およそ8000軒ある動物病院のうち、約6000軒が顧客となり、当時の動物病院の年間開業数250軒ほどのうち、約240軒がミスミのカタログ通販を利用して開業する圧倒的な勝利を得ることができた。
勝因は、人の縁や時の運などに恵まれた面もあるが、一番のポイントは「自らの取り組み姿勢を正したから」であった。「失敗からの学び」である。
このような経験を、僕は会社員時代の20年間で17回経験した。そして、その17回の戦績の内訳が、「5勝7敗5分け」なのである。失敗からの学びは一生忘れないほどに大きいものだ。
守屋 実
株式会社守屋実事務所
代表