日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は国土交通省などの統計から、「フルローンで新築マンションを購入」した場合について考えていきます。
40代、頭金なしで4500万円マンションを購入…月21万円返済の現実味 ※画像はイメージです/PIXTA

「フルローンでマンション購入」にもメリットはあるが…

ここまで物件価格の25%程度の頭金を用意することを前提に考えてきましたが、頭金が用意できなければマイホームを実現させることは難しいのでしょうか。

 

家賃に子どもの教育費、家族の生活費……毎月の出費はトントンで、なかなかマイホーム実現のための貯蓄が進まない、という人も多いことでしょう。しかし家賃を払い続けるなら、いっそ購入したい、と考える人も多いでしょう。

 

頭金なしで組む住宅ローン、つまりフルローンは、結論からいえば、返済能力などに問題なければ組むことは可能。しかし返済負担率は大きくなるので、金融機関の審査が厳しくなったり、借入可能な金融機関が限られたりします。

 

もちろん、フルローンを利用することにもメリットはあります。

 

急な出費や将来の必要資金に当てられるので、貯蓄があってもフルローンを組む人もいます。頭金を貯めてから購入に至るよりも、早く返済を始めて早く完済して老後に備える、という考え方の人も。

 

さらに住宅ローン借入残高の1%が所得税と住民税の一部から控除される「住宅ローン控除」は、借入残高は最大4000万円、認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合は5000万円、控除額は前者の場合は年間最大40万円、後者の場合は50万円です。借入金額が4000万円、または5000万円を下回るなら、フルローンのほうが住宅ローン控除が最大限利用できる場合があります。

 

ここまで聞いて「頭金なしのフルローンもいいかな」と思った人もいることでしょう。しかし注意が必要なのが金利。金融機関や商品によっては、頭金によって借入金利が変わることがあります。たとえばフラット35の金利は、頭金が1割以下だと年率1.58%となります。フルローンの場合は金利が高くなると考えたほうがいいでしょう。

 

仮に40代前半の平均的な会社員が4500万円のマンションを購入、年金生活が始まる前にローンは完済させたいと、20年返済で借入をした場合を考えてみます。

 

まず頭金を物件価格の25%を用意し、金利は変動で当初5年は0.5%、以降は1.0%としてシミュレーションをしてみます。この場合、利息分は272万4840円で、毎月の返済額は、5年目までは14万7802円、5年目以降は15万3371円となります。平均的な年収を手にしているとすると、毎月の返済負担も軽く感じられるでしょう。

 

一方、頭金なしで金利は固定で1.58%の場合をシミュレーションをしてみます。利息分は751万3066円で、毎月の返済額は21万8805円。利息分に500万円近い差が生じますし、月々の返済負担にも6万円近い差が生じます。これは家計にとっては大きな差です。

 

実際、フルローンで新築マンションを購入したけれど、このコロナ禍で収入が減少。返済が困難になったケースも見られます。フルローンでなかったら返済は続けられたともいいきれませんが、頭金ありに比べてフルローンは返済不能になる可能性は高くなるので注意が必要です。

 

頭金を用意するか、それともフルローンを活用するか、それぞれ家庭の事情がありベストな選択肢は変わるでしょうが、どちらにせよ、無理なく返済できるプランであることが大切です。