日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点をあてるのは「看護師の給料」。コロナ禍で過酷な労働環境に置かれている看護師に注目が集まっていますが、全体的にはどうなのでしょうか。見ていきましょう。
「看護師」給料手取りで23万円…「労働環境が過酷すぎる」は本当か? ※画像はイメージです/PIXTA

「看護師の労働環境」は過酷なのか?

さらに看護師の勤務実態を『2020年病院看護実態調査報告書』から見ていきましょう。

 

1週間の「所定労働時間」は、平均38.9時間。「超過勤務時間」は平均4.4時間で、「1~4時間」の回答が最も多く34.7%。全体としては決して残業の多い職種ではありません。一方で「20時間以上」との回答が3.1%ありました。

 

休みについて見ていくと、「週休形態」は「週休2日(4週に8日の休日)」が最も多く47.9%。「週休2日(1週に必ず2日の休日)」が25.5%と続きます。一方で「週休1日」との回答が0.3%ありました。

 

有給取得率を見ていくと、平均60.5%。厚生労働省『就労条件総合調査』によると、有給休暇取得率は52.4%としているので、平均よりも多少有給は取りやすい環境下にあるといえそうです。一方で「有給取得率10%未満」の回答が1.9%ありました。

 

また多くが日勤と夜勤の交代制である看護師。「二交代制(夜勤16時間以上/1回)」が64.4%と最も多く、また二交代制の病院における「月平均夜勤回数」は4~5回が最も多く28.9%。続いて「5~6回」が17.8%となっています。

 

夜勤もある勤務形態からか、離職率が高いというイメージがある看護師ですが、実際はどうなのでしょうか。正規雇用の看護師の離職率は11.5%。全国の離職率の平均は約15%程度(厚生労働省『雇用動向調査』)といわれているので、決して離職率が高い職種ではありません。

 

都道府県別に離職率を見ていくと、最も離職率が高いのは「東京都」で14.9%。「千葉県」14.3%、「兵庫県」14.2%、「神奈川県」13.8%、「埼玉県」「大阪府」13.5%と続きます。一方で最も離職率が低いのは「岩手県」で5.6%でした。

 

また病院の種別では「個人」が最も高く20.3%。「その他 公的医療機関」17.7%、「済生会 」14.9%、「医療法人」、14.4%、「医療生協 」13.4%と続きます。病院の規模別では「99床以下」が最も多く13.5%。「100~199床以下」が12.9%、「200~299床」が12.4%と続きます。

 

このような状況のなか、人材確保や定着のための取組みとして、最も多く行われているのが、「看護補助者への研修の充実」で66.8%。続いて「看護補助者から意見を吸い上げる場や仕組みの構築」で65.9%、「勤務日数や勤務時間の選択を可能にする」44.7%。「給与の引上げ」は26.3%に留まりました。「割に合わない……」という看護師の声に対して、実際に給料を上げて対応するのは、なかなか難しいことのようです。

 

このように見ていくと、「看護師=過酷」というイメージが強いですが、それがすべてというわけではないことがわかりました。ただ一部には、過酷な環境下で頑張るしかない看護師もいることもやはり事実なようです。