日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点をあてるのは「2021年大学新卒者」。厳しい就職活動を経て社会人になった彼らの今後を考えていきます。
会社員平均給与8%減…コロナ禍の「大学新卒者」未来も希望もない

2021年4月入社の大卒社員…生まれた時の会社員の平均給与は?

苦労した就職活動を経て始まった社会人生活。初めて手にした給料に感動を覚えたのではないでしょうか。

 

厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、大学卒の場合の平均初任給は21万200円。男性が21万2800円、女性が20万6900円。

 

企業規模別に見ていくと、「従業員1000人以上企業」の大卒初任給は男性21万5900円、女性20万9700円、「従業員100~999人企業」は男性21万1000円、女性20万5200円、「従業員10~99人企業」は男性20万6000円、女性は20万1800円。

 

日本標準産業分類に基づく16大産業別に見ていくと、最も初任給が高いのは「学術研究、専門・技術サービス業」で22万7200円。最も少ないのが「複合サービス事業 」で18万4900円でした。

 

企業規模や業種など、状況が違えば初任給でも差が生じるものですし、それは新社会人であっても想定済みでしょう。

 

それでも、まだまだ新社会人であれば夢や希望でいっぱいであるはず。そんな人たちに、ひとつ、残念なことを伝えると、今の日本では「なかなか給料が上がらない」ということです。

 

国税庁『民間給与実態統計調査』によると、会社員(給与所得者)の平均給与は436万円。前年比1.0%の減少でした。

 

もっとさかのぼりましょう。大学新卒者が生まれた1998年。長野冬季オリンピックでは5つの金メダルを獲得し、初めて日本がサッカーワールドカップに出場した年。お祭り騒ぎなビッグイベントで盛り上がった一方で、経済成長は戦後最大のマイナスを記録。日本長期信用銀行や日本債券信用銀行が破綻するなど、混乱が見られました。

 

そんな、会社員にとっては受難といえる年の平均給与は464万円。いまよりも30万円ほど高く、20年あまりで日本の会社員の平均給与は8%ほど減少したことになるのです。

 

その後の平均給与の推移を見てみると、大学新卒者が生まれた1998年を上回ることはなく、2010年まで下降の一途。アベノミクス効果もあり、2010年後半は上昇基調にありましたが、確実なものではなく、2019年には前年比マイナスを記録。そしてコロナ禍……再び上昇基調、というのは難しいでしょう。

 

大学新卒者が生まれてから、日本人は「給料が増えた!」と実感するような時はなかったと言えるのです。

 

さらに厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』で会社員の年収を年齢別に見ていくと、「20~24歳」で313万9500円だったのが、年齢とともに増えていき、「50~54歳」で590万4400円とピークを迎えます。この20年余り、給与が増えることがなかった日本の実情を顧みると、大学新卒者の給与もこれと同じように推移していくのでしょう。

 

このように、就職活動で大変な思いをした新社会人にとって、「これからの会社員人生はすでに決まっている」といえるような状況でもあるのです。

 

生まれて一度も景気が良かったことがなかった新社会人。こんなこと当たり前、と意外と冷静に受け止めているかもしれません。