副業の推進、公的年金への不安などにより、不動産投資を行う会社員、いわゆる「サラリーマン大家」が増加しています。しかし知識が不十分のまま不動産投資に乗り出してしまい、きちんとメリットを享受できている人は少ないのが現状です。今回は青色申告と白色申告について、サラリーマンの節税相談で定評のあるトランス税理士法人の中山慎吾税理士が解説します。
サラリーマン大家「青色申告と白色申告、どちらが得?」税理士の回答 ※画像はイメージです/PIXTA

雑貨販売で「白色申告」をしていた会社員の落胆

青色申告のメリットで「65万円の控除」とありますが、その年の所得がそもそも赤字であった場合には65万円の特別控除を受けることができません。そのため、大きな減価償却費を計上できる不動産オーナーや、事業を始めたばかりで経費の方が大きくなりがちな副業サラリーマン、個人事業主の場合は青色申告のメリットは受けにくくなると考えられます。特別控除の恩恵がないのであれば、複雑な帳簿を用意する手間は無駄と感じる方もいるでしょう。

 

もう1つ注意するポイントがあるので、これまで副業の雑貨販売で事業所得を毎年確定申告していたサラリーマンのAさんの事例で紹介しましょう。

 

Aさんは記帳が比較的楽な白色申告をしていました。そしてある年の5月に投資用のアパートを購入。アパートの賃料収入が高く、不動産所得が大きな黒字になる見込みだったため、税金の恩恵がある青色申告に切り替えたいと考えました。青色申告申請の提出期限である3/15は過ぎていましたが、不動産事業を開始した日から2ヵ月以内であるので、税務署に青色申告の申請を出しても間に合うと考えました。

 

しかし、結果として税務署から承認されませんでした。承認されなかった理由は「不動産事業を開始したのは5月であっても、そもそも事業所得で毎年確定申告をしていたので3/15までに青色申告の申請を出さなければならなかった」というものです。

 

つまり、何か事業所得を白色申告していた場合、年の途中で別の事業を始めて申請をしても、青色申告の適用は翌年からになる可能性が高いと言えるのです。たとえば、所有戸数が事業的規模に増えた不動産投資家など、白色申告から青色申告への変更を検討している方にとっては注意が必要です。

 

最後に冒頭の繰り返しになりますが、「青色申告と白色申告のどちらを選択すべきか?」というテーマは、「こちらが有利」という万人に当てはまる答えはありません。それぞれの特徴をよく理解することが重要です。