副業の推進、公的年金への不安などにより、不動産投資を行う会社員、いわゆる「サラリーマン大家」が増加しています。しかし知識が不十分のまま不動産投資に乗り出してしまい、きちんとメリットを享受できている人は少ないのが現状です。今回は「固定資産税の誤課税」の問題について、サラリーマンの節税相談で定評のあるトランス税理士法人の中山慎吾税理士が解説します。
恐ろしい…埼玉県新座市在住60代夫婦「固定資産税誤課税」で家を失う ※画像はイメージです/PIXTA

固定資産税納税通知書…鵜呑みしてはいけない!?

不動産を所有する方は、毎年4月から6月までの間に、「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)納税通知書」が所有不動産の所在地を管轄する市町村(東京23区の場合は東京都)から送られてきます。

 

あらためてその税額を見てみると、誰にとっても決して軽くはない金額であるものの、ほとんどの方が素直に支払っていると思いますし、税額に不満を持ったところで、税額の根拠を示した課税明細書に並んでいる専門用語を見ると意気消沈してしまうことでしょう。

 

ところが、この固定資産税や都市計画税には思わぬ落とし穴があるのです。

 

固定資産税は、所得税や法人税、消費税や相続税のように自分が払う税額を自分で計算する「申告課税制度」とは異なり、土地・家屋を役所が一方的に評価して課税する「賦課課税制度」を採用しています。つまり納税者自身が税金の計算をする必要がなく、役所が税金の計算をして納税者に納税通知書を送ってきます。しかし、その計算がもし間違っていたらどうでしょうか?

 

固定資産税の計算ミス、評価ミスが発覚し過大徴収された固定資産税の還付が認められる事例が多発しています。

 

少し古いデータですが、平成24年8月28日に総務省が発表した、「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」では、平成21年から23年度の3年間で、税額修正した納税義務者が1人以上あった市町村は調査回答団体の97%に上っています。

 

税額修正したもののうち、土地については増額修正が32.0%、減額修正が68.0%、家屋については、増額修正が40.5%、減額修正が59.5%となっています。

埼玉県新座市…固定資産税誤課税、3,000件発覚!

埼玉県新座市で、1986年以降約27年間にわたり市内に住む60代の一戸建て住宅に固定資産税を誤って過徴収し続けていたことが発覚しました。同税の滞納金などを支払い切れなかった夫婦の住宅は2013年10月、市に公売にかけられて売却されましたが、誤徴収が発覚したのは長年住み慣れた家を失ってから半年後でした。

 

夫婦が滞納していた額の総額は約800万円で、このうち約6割が延滞金(年率14.6%、2014年1月から9.2%に)でした。まるで高利の延滞金に追い立てられて家を失ったようなものです。

 

ミスが発覚したきっかけは、公売物件を落札した不動産業者が土地・家屋の固定資産税が高すぎることに気づき、土地・家屋の固定資産税などの調査を新座市に求め、その結果、過大徴収のミスが判明しました。1986年に新築された住宅は100㎡の敷地に建つ延床面積約80㎡の木造2階建。本来200㎡以下の住宅用宅地の固定資産税は、小規模宅地の特例によって課税標準が6分の1になりますが、夫婦の住宅は特例が適用されないまま、86年当時から課税され続け、2013年度の税額は、本来年額43,000円のところが119,200円も課税されていました。

 

あってはならない課税ミスの発覚に新座市は、持家を失ってアパートに転居していた夫婦に謝罪し、20年前の1994年まで遡って取りすぎた固定資産税や延滞金など約240万円を返還しました。

 

その後新座市は、固定資産税調査特別班を編成し、市内の固定資産の全件調査に乗り出すことになりましたが、全件調査を進める中で想定外の新たなミスが判明しました。土地だけでなく建物に関しても過大徴収ミスがあることが分かり、その数なんと約3,000件、返還額は約8億4,000万円もの金額です。