副業ブームや公的年金への不安などにより、不動産投資を行う会社員、いわゆる「サラリーマン大家」が増加しています。そんな彼らにも他人事ではないのが「税務調査」。ある日、税務署から「税務調査に伺いたい」と連絡があり、慌てふためく……そんな人も珍しくありません。税務調査、どれほどの確率で起きるものなのでしょうか。
決して断れない「税務調査」…サラリーマン大家が直面する確率 ※画像はイメージです/PIXTA

統計上、税務調査が来る確率は100人に1人だが…

税務調査に入られたら断ることはできません。では税務調査に入られる確率はどの程度のものなのでしょうか?

 

昨年はコロナ禍もあり、税務調査の件数が激減しているという特殊事情があります。そこでコロナ禍以前のデータで国税庁が発表している「税務行政の現状と課題」というレポートから、不動産投資家に税務調査が来る確率を探ってみましょう。

 

同調査によると、1年間で税務調査が来る確率は法人で3.2%、個人で1.1%というデータが出ています。個人においては約1%ということになり、自分の所に来る可能性は低いと考えられると思いますが、そうとも言い切れません。昨年個人所得税の確定申告書が出された件数は2204万件。その1%ということであれば、通常約22万人の個人に税務調査が実施されるという計算になります。

 

しかし、確定申告書を提出した2204万人のうちおおよそ6割から7割の方は、医療費控除やふるさと納税等の寄付金控除、住宅ローン控除などのみの申告で要件さえ満たせばよく、税務調査の論点とはなりにくい形で申告書が提出されています。また、医療費控除や寄付金控除、住宅ローン控除などの申告で要件を満たさない等の誤りがあった場合、実務上は税務調査ではなく、行政指導という形で是正される方が多いです。

 

このような簡易な形での申告の7割にはほとんど調査が入らず、残り3割の方に税務調査が入りやすいことを考慮すれば、その確率は3.3%となります。つまり法人に対する調査と確率的には変わらないということになります。

税務調査で指摘されがち…注意すべきポイント

実際に不動産投資家に税務調査が入った場合、指摘が多く注意すべき点として以下があげられます。

 

家賃の計上は絶対に間違えてはならない。

不動産投資家の収入のほとんどは保有物件からの月々の家賃や、礼金・更新料のような臨時的なものになると思われますが、この家賃等の計上は絶対にごまかしてはいけません。

 

アウトソーシングが整備された不動産経営において、家賃等の管理は管理会社などに委託していることがほとんどだと思います。不動産の管理会社は、家賃のオーナーへの支払状況を支払調書という形でマイナンバーまで付けて所轄の税務署に報告しています。その支払調書と実際に納税者から提出された申告書の家賃状況を突き合せた時に数字にズレがあれば、税務署が不信に思うのも当然です。

 

必要経費などの費用については、税務署側もその費用が本当に不動産所得と関連がないことを証明するのは困難が伴う例もありますが、家賃計上を間違えることについては議論の余地がほとんどありません。その間違いが「仮装・隠蔽」と税務署に指摘されてしまうと、重加算税が賦課されてしまうこともあります。

 

個人に入る税務調査では、特に税務署側が否認とする証拠をすでに掴んでから税務調査に入るということが非常に多いと実感しています。したがって支払調書等税務署側が捕捉しやすいものの計上は、繰り返すようですが絶対にごまかしてはいけません。