読む前に内容を予測し、1冊の本を30分かけて3回読む
続いて、具体的な読書の仕方ですが、筆者が実践しているのは、1冊の本を30分かけて3回読む、という方法です。
まず、本を手に取ったら、表紙から本の内容を予測します。表紙には、本の内容についてのたくさんのヒントが隠されています。
例えば、『はじめての人のための3000円投資生活』(横山光昭/アスコム)という本であれば、そのタイトルから、この本は3000円から始められる投資の方法について書いてある本だと予想することができます。投資には、たくさんのお金が必要なイメージがありますが、このタイトルから、この本に書かれていることは、意外と少額(=3000円)からでも取り組めることが書かれているんだろうな、ということも分かります。
また、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子/東洋経済新報社)という本であれば、この本は、AIは教科書が読めるのに、最近の若者はなぜ教科書が読めないのかが書かれている本だと予測できます。
もちろん、タイトルから想像できる内容を裏切るような作りをしている本もたくさんありますので、この予測は当たっていても、当たっていなくてもどちらでもかまいません。まずはタイトルから予測をして、思考力を鍛えることが大切なのです。
そして、カバー、帯、タイトル、著者名など、初めて見る単語や著者の場合は、自分で言葉の意味や著者の略歴を調べます。
続いて目次を見て、本にどんな内容が書いてあるかをざっと確かめた後、「はじめに」と「おわりに」を読みます。「はじめに」には、著者がこれからどういう主張をするかが書いてあるケースが多いからです。そして、「おわりに」を読むことで、本のゴール、目的が分かります。そこまでを行ったら、いよいよ読み始めます。
1回目は速読です。本に書かれていることの中で重要なことは、筆者は2割だと考えています。200ページの本であれば40ページです。この40ページがどこなのかを見つけるのが1回目の速読での作業です。1回目で取捨選択したページには、付箋を貼ったり、マーカーを引いたり、ドッグイヤー(折り目)を付けています。
2回目に、この印を付けた部分を真剣に熟読します。このときに筆者がするのが「芸能記者読み」と呼んでいる方法です。本を読むのではなくて、本を取材するように読むのです。例えば、誰か芸能人が不祥事を起こした時に、芸能記者は、その芸能人に「何でそんなことしたんですか」などと、いろいろ突っ込みます。ああいうイメージで本を読むのです。
本を読みながら、「これ、本当?」「これ、どういうことなの?」「何でこういうこと言うの?」というように、質問をしたり、議論に参加したり、本と対話をします。
3回目は、「要約読み」をします。これは、読んだ後にこの本に何が書かれていたのか、30〜40文字で言えるようになることを意識しながら読む方法です。
学びを成果に変えられない人は、「分かった気になっている」人です。みなさんも、過去に読んだ本で、内容を覚えていない本や、身に付いていない本がたくさんあると思います。
一言で本の内容を言い表せなければ、分かっていないのと同じなのです。例えば最近読んだ本の内容を思い出してみてください。その本で一番何を伝えたかったかを話せなければ、読書をしている意味はありません。
その本の中で、一番価値の高いところ、著者が熱い思いで世の中に伝えたいメッセージを読み取ります。そして、本当に、その本を理解できているかを知るために、30文字とか40文字で要約できるかどうか、どうやって内容を人に話したらいいかを意識しながら読むのがこの3回目です。
1回目の速読が10分、2回目の20ページの熟読が10分、最後の3回目の要約読みが10分、合計30分で、1冊の本を読み終えます。
本の読み方には、マクロ読みとミクロ読みの2つがあります。しかし、多くの人は、ミクロ読みの視点しか持っていません。開いているページ、文章を1文ずつ理解しようという読み方です。
この読み方で読むと、本を読んでいるときは理解ができるのですが、全部読み終わった後に、結局何を伝えたかったのかが分からないことが多いのです。そこで、速読や熟読、要約読みでマクロの視点をプラスすることが大切なのです。