兄弟間の遺産分配に差があると、ドロ沼の争いになることが少なくありません。今回は、遺言書で指定された遺産分配の内容に不満があり、争族になってしまった事例から、相続争いを防ぐための秘訣を行政書士事務所ユーサポートの上野佳子氏が解説します。

積み重なった不満が大爆発…遺言書は絶対なのか?

遺言書を読んだあと、その内容について、兄弟で話し合いが行われました。

 

 タロウさんは「お前らは浪人したうえに、大学で留学しただろ! 俺は介護もしてきたんだ。遺産が多いのは当然の権利だ」と、

 

ユキオさんは「兄貴は、ずっと実家に住んで生活費をもらってたじゃないか」と、

 

ジュンジさんは「ずっと帰ってなかったからって、いくらなんでも0円はありえないだろ」と、それぞれ一歩も譲らず、3人の会話はヒートアップ。

 

子どものころからの不満も爆発したのか、ジュンジさんは大激怒し、遺留分侵害額請求を進めています。

このケースで、ジュンジさんはお金をもらえるのか

……この事例は相続トラブルの典型例といえるでしょう。ただでさえお金が絡むと揉めるものですが、「兄弟間の遺産分配に差」があると、かなりの確率で争いになってしまいます。今回のケースでは、ジュンジさんは遺留分を侵害されたので、遺留分侵害額請求を行いました。

 

遺留分とは、法定相続人に保証されている最低限の遺産のことです。遺言によって侵害されることはありません。

 

事例のように、遺言書で特定の人物に多く遺産を相続させる旨が書かれていると、もらえる遺産がほかの兄弟より極端に少なかったり、1円ももらえなかったりするケースが発生します。そのようなときに遺留分侵害額請求を行うことで、最低限の遺産を獲得できるのです。

 

遺留分として請求できる割合は、直系尊属のみが相続人ならば、被相続人の財産の3分の1、それ以外の相続人ならば、被相続人の財産の2分の1となります。ただし、相続人が兄弟姉妹であるならば、遺留分はありません。

 

遺留分侵害額に相当する金銭の支払いについて、相手方との話し合いがつかない場合には、遺留分を侵害された人が、遺留分を侵害された限度において、請求調停を家庭裁判所に申し立てることができます。

 

この申立ては、遺留分の侵害を知ったときから1年以内に行わなければなりません。遺言書を作成する際は、このような事態にならないようにくれぐれも配慮しましょう。

 

※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。

 

 

上野 佳子

行政書士事務所ユーサポート代表

 

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