積み重なった不満が大爆発…遺言書は絶対なのか?
遺言書を読んだあと、その内容について、兄弟で話し合いが行われました。
タロウさんは「お前らは浪人したうえに、大学で留学しただろ! 俺は介護もしてきたんだ。遺産が多いのは当然の権利だ」と、
ユキオさんは「兄貴は、ずっと実家に住んで生活費をもらってたじゃないか」と、
ジュンジさんは「ずっと帰ってなかったからって、いくらなんでも0円はありえないだろ」と、それぞれ一歩も譲らず、3人の会話はヒートアップ。
子どものころからの不満も爆発したのか、ジュンジさんは大激怒し、遺留分侵害額請求を進めています。
このケースで、ジュンジさんはお金をもらえるのか
……この事例は相続トラブルの典型例といえるでしょう。ただでさえお金が絡むと揉めるものですが、「兄弟間の遺産分配に差」があると、かなりの確率で争いになってしまいます。今回のケースでは、ジュンジさんは遺留分を侵害されたので、遺留分侵害額請求を行いました。
遺留分とは、法定相続人に保証されている最低限の遺産のことです。遺言によって侵害されることはありません。
事例のように、遺言書で特定の人物に多く遺産を相続させる旨が書かれていると、もらえる遺産がほかの兄弟より極端に少なかったり、1円ももらえなかったりするケースが発生します。そのようなときに遺留分侵害額請求を行うことで、最低限の遺産を獲得できるのです。
遺留分として請求できる割合は、直系尊属のみが相続人ならば、被相続人の財産の3分の1、それ以外の相続人ならば、被相続人の財産の2分の1となります。ただし、相続人が兄弟姉妹であるならば、遺留分はありません。
遺留分侵害額に相当する金銭の支払いについて、相手方との話し合いがつかない場合には、遺留分を侵害された人が、遺留分を侵害された限度において、請求調停を家庭裁判所に申し立てることができます。
この申立ては、遺留分の侵害を知ったときから1年以内に行わなければなりません。遺言書を作成する際は、このような事態にならないようにくれぐれも配慮しましょう。
※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。
上野 佳子
行政書士事務所ユーサポート代表
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】